コールセンターとSDGs Vol.5「コールセンター業界が取り組むSDGs」
本格的な取り組みのきっかけは新型コロナ
北海道・札幌の本社を中心に、東京・大阪・名古屋・仙台・福岡といった全国のコールセンター集積地に加えて、ベトナム・ホーチミンでもコンタクトセンター関連業務を展開する株式会社アイティ・コミュニケーションズ。自社開発のIP-PBX・CTIシステムである”Navi-Telephony Plus”や”CyberTelephony”と、正社員雇用を前提とするコミュニケーター採用が特徴です。

同社は、2000年の創業時に全国を回り、コールセンター業務に最適として札幌の地を選んだとのこと。独自システムも、北海道大学や札幌市、さらにサッポロバレーに集まった情報系ベンチャー企業を含めた、産官学の協力の中から生まれたソリューションです。また、年齢・性別・国籍・ハンディキャップにとらわれることなく、長期キャリア形成と待遇の安定化を図る正社員雇用も、それぞれの地域に働きがいをもたらすものであり、SDGsが採択される以前から取り組んできた地域連携・地域貢献と言えるでしょう。
SDGsへの取り組みのきっかけは新型コロナウイルス感染症によるベトナムでのロックダウンだったと管理本部管理部部長の逢見篤太さんは振り返ります。「私がベトナムに駐在していた時期に新型コロナの流行が始まったのですが、帰国後にホーチミンがロックダウンになって、当社の拠点も大きな影響を受けました。街全体が動けない状況で、業務の継続を含めて働きがいや経済成長を考えましたし、オンラインでも教育を続けるという意味で質の高い教育をみんなにという項目もより意識する機会となりました」
それ以前も、年賀状の廃止などの積極的なSDGsへの取り組みを見せるクライアントに刺激されて、同社で何ができるかを模索していたといいます。ベトナムの状況から、働きがいや質の高い教育といった具体的な目標が見えてきたことで、2021年11月21日にはSDGsへの取り組みの起点となるIT-Com SDGs委員会を立ち上げるなど、さらに歩を進めることとなります。
質の高い教育としての評価制度と資格取得支援
働きがいや質の高い教育としての施策の一つに、独自開発のマスタースキル評価制度があります。4カ月間の勤務を評価し、本人にフィードバックするとともに昇給にもつなげるというもの。人財マネジメント本部人財開発部部長の道場真弓さんによると「長年にわたりブラッシュアップしてきた評価制度ですが、2019年から現在の形になっています。社員のスキルアップに対する正当な評価と、それを給与として反映する仕組みで、改善できればワンランクアップするということを繰り返すことで、社員の継続したスキルアップと働きがいにつながっています」とのことです。
もう一つの取り組みに、2021年にスタートした資格取得支援制度があります。社員の学ぶ機会やスキルアップ促進を目的に、社員の個人資格取得をバックアップするもので、合格まで最長2年間の研修手当支給や、受験料の補助などを行っています。職位ごとに推奨資格があり、それらを取得した場合には資格手当として給与に反映される仕組みになっています。道場さんは「それぞれの階層で推奨資格の数と資格手当の金額は違うのですが、コンプリートしているメンバーもたくさんいます。対象はすべて公的資格で、もし退社したとしても履歴書に書けるものです。それを会社で経費を払って手当もつけるというすごく大盤振る舞いな福利厚生なのですけれど、自分自身のキャリアアップ、給与アップ、待遇アップのためにモチベーションにつながっています」と説明します。一人でたくさんの資格を取る人、全然取らない人と二極化している部分もあるとのことですが、資格取得を目標に自ら学び続けられる制度が成功した事例と言えるでしょう。

逢見さんも「性別や学歴などに一切関係なく、あくまでも同じ基準の評価だったり、本人のやる気を支援したりという制度を通じて、男性だから女性だからということなく正当なキャリアアップやスキルアップを続ける機会を設けることがSDGsにもつながっていると思います」と話します。同社にとどまらず、コールセンター業界全体の発展やイメージアップにもつながる取り組みではないでしょうか。
女性が働きやすい職場づくり
働きやすい職場環境づくりも、働きがいにつながります。産休・育休の取得率はほぼ100%で、多くの社員が取得していることもあって、周囲の理解と協力も進んでいるといいます。さらに、産休・育休から復帰後の社員のほとんどが、基本的に6時間勤務となる短時間労働正社員制度を利用しています。「以前は就学時までだったのですが、今は小学校3年生まで利用できるように制度を拡大しています。また、介護でもこの制度が利用できるので、親御さんやお子さんの介護のために時短をしている正社員もいます」(道場さん)とのことです。
産休・育休の取得や短時間勤務制度は法令で定められた権利ですが、周知がされていない、周りの目が気になるといった理由で、取得しない人も多いと聞きます。女性が多い業界として、これらの周知や理解は重要であり、社会全体にも好影響を及ぼすのではないでしょうか。
こういったサステナブルな取り組みは、国内はもとよりベトナムセンターでも好影響を与えているといいます。逢見さんによると「ベトナムでは、コンタクトセンター機能だけでなく、システム開発も行っていて、その技術者を札幌に呼んで研修を行うなど、社員間の交流も進めています。その中で、当社の社訓である”愛と正義”という考え方が伝わっていて、ベトナムに持ち帰って共有してくれています。そのおかげで、一体感や団結感は日本よりも強いのではないでしょうか」とのことです。人と人とのつながりの中で、持続可能な人財の活躍や成長に果敢に取り組む同社の姿勢は、業界を越えて学ぶところも多いようです。

https://ccaj.or.jp/ccajnews/back_2024.html
① 314号 「コールセンターにおけるSDGsの現在地」
② 315号 「コールセンター業界が取り組むべきSDGsとは」
③ 319号 「コールセンター業界が取り組むSDGs」
④-1 323号 「”グラデーション世代”が作り上げるサステナブルなコールセンター」
④-2 325号 「次世代のホープが考える働き方ややりがいとは」
出典:CCAJ NEWS 2024年6月号(Vol.327)

