特別インタビュー:コンタクトセンター業界とCCAJ

今後、いろいろなツールやデジタルの活用で変化していくことには期待していますが、一方で、人が中心であるコンタクトセンター業界としては、変わるべきところと変わってはいけないこととがあると思っています。変わってはいけないところ、私たちが今後もずっと大事にしていかなければいけないところは、どのようなことだと思われますか。
変わってはいけないところは、人だからこそできるっていう領域ですね。機械では代替が利かないところであり、一つは感情の部分でしょう。人と接点を持っていく中で、やっぱりお客さまの感情であったり、コミュニケーターの感情が重要だと思います。コミュニケーションの中で、人だからこその安心感やうれしさ、もしくは腹が立つというという感情が生まれると思います。そこを無くしてはいけないと思います。感情は人間しか持ち得ないところなので、そこをどう武器として使っていくかというところが大事ですね。
もう一つはひらめきというか、もっとこうしたら良いのではないかという適切な解釈はやっぱり人が優れています。そこの応用力といったものが重要になると思います。
高機能化が進むツールやAIと共存できるだろうかという不安もあります。AIが登場しはじめた時期に、無くなる仕事のリストにコールセンターが入っていましたが、そうはならないとお考えですか。
その指摘は、今までやってきたコールセンター領域に関するものだと思います。それだけを続けていたら、AIに淘汰されるかもしれませんが、任せられる業務はできるだけは任せてしまって、新しい価値を探すといった人間だからできることを突き詰めていくことで、人が新しい力を発揮していけば、相乗効果が出ると思います。
過去の事例などを全部読み込んでそこから正しい回答を導き出すといった作業は、明らかに生成AIなどの技術が勝っています。人だと数十年もかかる作業でさえわずかな時間で答えを見つけてしまうので、そこでは張り合おうとしないことが大事です。
人と機械の業務をきちんとわけることが重要ということですね。それがうまくいけば、これまで人が担当していた業務の負担も減るのではないでしょうか。
そう思います。どのくらいで実現できるのかは意見が分かれますが、オートパイロット化はまちがいなく進みます。そういった機械が得意な分野に関しては、任せるところは任せてしまって、人にしかできないところで勝負していくという業務の切り分けがポイントだと考えています。
これまで業務が多忙過ぎて、人にしかできない大事なところがおろそかになっていたことがいっぱいあると思うんですよ。人がかなわない領域は機械に任せてしまうことで、それまで全部一人でやってきた煩雑な作業から解放される部分も出てきます。人件費も高いですから、サービスの差別化とか、プロフィットにつながるようなコンタクトポイントを作ることといった部分で人が力を発揮していくことで、共存だけでなく向上もしていけると思います。
人がやるべきことを切り分けて、いかに新しい価値を見つけていくかということだと思うのですが、その見極めは大変ですね。
コンタクトセンターに限らず、オートパイロット化というのは世の中に広がっていくと思います。機械に任せることが普通になった時に、エンドユーザーが何を求めるかということが、まだちょっと分からないですよね。もっと自動化して欲しいのか、以前のように人に対応して欲しくなるのか、その辺のユーザーニーズがまだどの企業も把握し切れていません。今は、まずオート化を進めようという時期なのではないでしょうか。
最先端というか社会に密着しているコンタクトセンターは、社会のニーズを捉えて、お客さまの心の動きを高めていくことで新しい仕事を作っていかなければならないということなのでしょうね。
自分たちの仕事は自分たちで作っていくべきでしょうね。仕事を取られると思うとおもしろくないでしょうが、楽天的というかプラスに捉えて、任せるところは任せて、自分たちでしかできないことを探していくといった取り組みがおもしろいと思えると、非常に楽しい業界になるでしょうし、もっと元気が出るという気がしています。
コンタクトセンター業界全体が、社会基盤として不可欠な存在になってきている中で、協会活動はさらに重要になると思います。会長として、どのように進んでいきたいとお考えですか。
協会の使命というのは、一つだと思っています。コンタクトセンターの価値を上げていくことです。
コンタクトセンターが担う機能を上げることで企業が収益を上げられて、クライアントも快く仕事を依頼できるような業界になれると、すべてが非常にハッピーだと思っています。そんな世界は簡単にはできないですが、協会が目指すべきはそこに尽きると思います。
そのためには、会員企業の事例などを他の会員企業に紹介したり、現場の有益な情報を共有したりすることで、会員すべての価値を上げていく取り組みを続けていくことです。そして最終的には、働いている人たちの収入が、極端に言うと1.5倍ぐらいになるとすごく嬉しいなと思っています。
この業界の価値が、クライアントだけでなく一般の人から見ても、今よりも何倍も高くなっている状態を目指すべきで、それが協会の目的だと思っているので、そこを目指した運営を心がけていきたいと思っています。
名称を変えることは、協会の歴史の中でも大きな変革だと思います。なぜ、このタイミングで日本コンタクトセンター協会に変えるのか、その理由と込められた思いについて、主導されてきた呉会長からお話を伺いたいと思います。
一番の理由としては、この業界を取り巻く環境が、これからの5年・10年でまちがいなく大きく変化することです。DXの推進やAIの活用などで、コンタクトセンターの現場でも急激な変革を見せるだろうと考えています。ただし、一直線に進化するのではなく、いろいろな試行錯誤を繰り返して、スピードを上げながらこの業界も変わっていくことになると思います。変化に合わせ、協会も変わっていく必要があります。さらにその変化をチャンスに発展させていくことが重要です。そこで、協会としての姿勢を示す手段の一つとして、協会の名称そのものを変更しました。その姿勢から、皆さまにも私たちの想いが伝わるのではないかと考えています。
もう一つ、個人的にコールセンターという表現が現在のセンター運営に対して違和感がありました。私も含めて各企業ではコンタクトセンターという呼び名を使うことが多いので、コンタクトセンターに変更した方が納得していただけるのではないかと思い、理事会で提案して、総会でご賛同いただけたというのが経緯です。
変化する環境に対応する姿勢を見せるための改称ということですね。確かに、私たちの仕事は日々変わってきています。今後の進展次第ではまた名称が変わるかもしれないということですか。
今後の業界の変化によっては、また変わるかもしれないですね。現時点では一番しっくりとくる名称だと思います。
協会名称変更にあたって「今後のコンタクトセンターのあるべき姿」が定義されました。これは、コンタクトセンター協会が率先して取り組むことで、業界を牽引していくための目標と捉えてよろしいでしょうか。
そうです。4つの視点からなる次の世代のコンタクトセンター像を明確化しました。具体的には、生活者・顧客、従業員・働く人、組織・事業者間、社会の各項目について定義しています。この指針を示すとともに、その実現に向けた支援を通じて、職業・職場としての魅力を高め、業界の健全な発展に尽力していくことが協会の役割だと考えています。

最後になりますが、読者の皆さまにメッセージをお願いします。
今後、AIの発展とデジタル活用によって、この業界の仕事内容は変わっていくと思います。その変化にきちんと対応しながら、現場の人たちの力をもっと解放できるような業界にしていきたいと思っています。協会としてもデジタル化の推進に加えて、人にしかできないところを突き詰めていくためのバックアップを続けたいと思いますし、できればリードしていきたいと考えています。そうした活動を皆さまに認めていただけるようにがんばりますので、引き続き応援をよろしくお願いします。
本日は、貴重なお話をありがとうございました。
出典:CCAJ NEWS 2024年10月号(Vol.331)

