座談会:AI活用・DX推進で実現する “新時代のコンタクトセンター”
出典:CCAJガイドブック Annual Report Vol.34
AI活用・DX推進で実現する “新時代のコンタクトセンター”
そこで、今回の特集では、デロイトトーマツ コンサルティング合同会社の住川誠史氏とCCAJ会長・呉岳彦氏に対談を通じて、近未来に求められる“コンタクトセンター”のあり方と、その実現のために行うべきAI活用・DX推進の方向性を探っていただいた。日本コンタクトセンター協会 会長 / 株式会社ベルシステム24 ホールディングス 取締役 常務執行役員 呉 岳彦 氏
デロイトトーマツコンサルティング合同会社 執行役員 住川 誠史 氏
日本コンタクトセンター協会 事業委員 / TETRAPOTk株式会社 取締役副社長 内田 嘉彦 氏
本日はお忙しいところありがとうございます。
はじめにお二人それぞれから自己紹介をお願いします。まずは呉さんからお願いできますでしょうか。
よろしくお願いいたしします。呉岳彦です。私は26歳の時に(株)ベルシステム24に入社して、今は53歳なので27年目、ずっとこの業界、同じ企業で仕事をしています。学生時代から当社大阪のセンターでアルバイトをしており、コミュニケーターやスーパーバイザー(SV)などを経験した後、26歳の時に正社員になりました。最初はオペレーションから入り、途中からはオペレーションと営業を並行して行うようなポジションになりました。そして、40歳の時に子会社の社長に就任し、同時にオペレーションを統括するようになって、それ以降、10年以上役員を務めています。
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)に関しては、昨年(2023年)、前任の会長が退任されることになり、「後任をお願いできないか」という話になり、2023年6月に会長に就任しました。それからのこの1年間は、協会の活動をキャッチアップできるよう努めております。
ありがとうございます。それでは住川さん、よろしくお願いします。
住川誠史と申します。よろしくお願いします。私は現在、デロイトトーマツコンサルティング合同会社のカスタマーストラテジーオペレーションユニットの責任者を務めており、CRMなどの顧客系のコンサルティングを行っています。 いま、呉さんが27年目とおっしゃられていましたが、わたしも同じ頃からコールセンターに関わるようになり、主なクライアントは保険会社でした。当時は保険販売の自由化が始まり、保険会社がこぞってコールセンターの重要性をうたって、自前の24時間センター作ったりしていた時代で、毎日、朝から晩まで保険会社へ行って、センターの立ち上げをサポートするような業務を行っていました。
私も損害保険会社の時間外センターを担当していましたので、そのご苦労がよくわかります。
ありがとうございます。そのような経験を経て総合コンサルティングファームに入社し、以降は20年以上、CRM領域のコンサルティングを行っています。これまで携わったプロジェクトのおそらく半分以上がコンタクトセンター関連なので、非常に愛着のある業界になっています。本日はよろしくお願いいたしします。
住川さん、ありがとうございました。わたしは証券会社を経て、2000年にトランス・コスモス(株)に入社したのが、この業界でのはじまりになります。トランス・コスモスでは、18年ほどコンタクトセンターのオペレーションと営業に携わっていました。その後、外資系のCRMシステムベンダーにキャリアを移し、コンタクトセンターを運営する各社様に対して、ITプラットフォームの導入提案を行っています。深いご縁をいただいて、現在TETRAPOT㈱というテレマーケティングを得意とするコンタクトセンターエージェンシーの事業経営を担っています。
お二人の自己紹介から、これまで、同じ時代を同じ業界の近くを歩んできたことがわかり、とても嬉しく思っています。本日は、こちらこそよろしくお願いいたします。
それでは、さっそく本題にはいりますが、はじめのテーマとして、コンタクトセンターの近未来、これから5 ~ 6年後、2030年くらいを見据えた時に、どのようなコンタクトセンター像を描いていらっしゃるのか、お二人それぞれにお伺させていただきます。まず、コンタクトセンターを運営する立場でこの業界を率いられている呉さんからお聞かせください。
そうですね、やはりAIの活用というのが大きなポイントですね。コンタクトセンターの業務は、AIを開発している企業からも「AIの導入効果が高い業界」と注目されています。
5 ~ 6年後、2030年のコンタクトセンターのイメージでは、オートパイロットのような自動化が進んでいるのは間違いないでしょう。今の時点では、応対にあわせてFAQが自動で出てくる機能や、応対の後処理工程を軽減する機能など、コミュニケーターをサポートする領域でAIの活用が進んでいます。そのように業務支援を高度化していこうという動きが数年続くと思いますが、その先にあるのはやはり自動で対応する機能への進化です。
AIがコミュニケーターをサポートする機能から、さらにその先に、応対自体にAIが用いられる進化への期待があるわけですね。
はい、そのように業務支援からAIの活用は深まると思いますが、一方、一足飛びには難しい面もあります。一部の先進的なセンターを除いて、日本のコンタクトセンターにはAIに学習させるためのデータがほとんど整理されていません。日本型の運用の良いところとも言えますが、頼りになる人や業務知識が多い人に聞く文化が、ノウハウやデータの属人化につながっていて、AIを活用するための学習データが構造化されていないという点は課題です。属人化している部分を洗い出し可視化してデータを整理していくには、かなり時間がかかるのではないかと思っています。
しかも、コンタクトセンターは多くの部門につながっています。そのため、可視化しようとする部門間の連携を考慮したうえでデータの取り方を考えないといけないのですが、例えば営業部門のような、コンタクトセンターと直接やり取りのない部署のメンバーにも、データ取得のプロセスを徹底してもらわないといけません。そういったところのバランスをとりながら進めなければならないので、そこは少し時間がかかるのではないでしょうか。
たしかにAI活用の精度をあげるには、学習データの有効性がとても大切ですし、おっしゃる通りAI導入にむけて組織横断的なデータ整理への協力が必要になりますね。
そうです。その点が重要です。ただ、その壁を超えると一気にAIを活用したオートパイロットが見えてくる世界になってくると思います。AIの性能の進化にもよりますが、ユーザー側からすると当然、今までよりレスポンスが速く、的確な回答が返って来るという、多くの皆さんが想像するAI活用の期待効果が見えてくるのが2030年くらいではないでしょうか。
コンタクトセンターの業務支援の形からAI活用が進み、将来的にオートパイロットになっていく進化の過程があることが、よくわかりました。そして、学習データの整備といった日本のコンタクトセンターの取り組むべき課題も見えてきました。ありがとうございます。
さて、おなじく2030年を見据えたとき、住川さんの見立てはいかがでしょうか。
ベースになるのは呉さんがおっしゃる通りAIの活用が当たり前になってくることでしょう。さまざまなチャネルが増える中で、コンタクトの総量は増えています。ですが、これから5年、10年を経過すると、その辺りもだいぶ様変わりするのではないでしょうか。先ほどオートパイロットという世界観をおっしゃっていましたが、あわせて問い合わせ対応のオープン化も進むと思います。例えば、お客様が企業のホームページをわざわざ探して何かを聞くのでなく、AIスピーカーに何かを聞けば高い精度でさまざまな情報を集めて答えてくれる、といったことになっていくと思っています。
そうですね。たしかに少し前とは比較にならないほど、いまのAIエンジンを搭載したAIスピーカーは、自然な受け答えができるようになってきています。それに回答自体の精度が高まることでスムーズなコミュニケーションが期待されますね。
はい、AIの受け答えが人間同士の対話とおなじように本当にスムーズになってくると、コンタクトセンターのコミュニケーターに求められるのは、「アドバイスが欲しい」などのコンシェルジュ的な対応になります。そうなると、コンタクトセンターで人が担当する業務は、感度よく意図を汲んで事前に教えてくれるような、アウトバウンド型の付加価値が高い業務にシフトしていくでしょう。データを活用し、おそらくこの人はこういう困りごとが発生すると予測しながら、ショートメッセージなどアウトバウンドで送り、問い合わせを未然に防いだりすることも出来るようになります。また、お問い合わせにあわせて魅力あるサービスを適切にご紹介したりするなど、そのカスタマーサービス自体に高い経済価値が認められるようにもなります。
それは、AIテクノロジーで自己解決できるプラットフォームと、コンタクトセンターでコミュニケーターによる手厚いコンシェルジュ対応をうけるサポートに分かれる未来でもありますね。
そうですね。例えば、耐久消費財や金融商品などは、カスタマーサービス付きのものと、カスタマーサービスが付かないもので価格が変わるようになると思います。カスタマーサービス付きの商品・サービスを購入されたお客様だけに、高付加価値のコンシェルジュサービスが提供されることが、AIテクノロジーの進化と同時に2030年ごろには出てくるのではないかと考えています。
AIの活用が進むにつれて、人を介したカスタマーサービスの価値が高まることは嬉しい未来ですね。

