特集:AI×チャットボットはコールセンター業務を革新するのか?

テクノロジー

出典:CCAJガイドブック Annual Report Vol.33

チャットボットの活用により、限られた 人的リソースの中で満足度の高いお客さま対応を実現

住信SBIネット銀行株式会社、ライフネット生命保険株式会社

AIの活用によりチャットボットの対話能力は飛躍的に向上するが、チャットボットとのコミュニケーション自体にネガティブな反応を示す生活者も少なからず存在する。既にAIチャットボットを活用し、センター運営の品質向上や効率化に取り組んでいるセンターの事例から、CS・CX向上につながる活用のあり方を探った。
現在の運用体制を終着点と考えず、常にさらなる改善の道を探ることが求められる

コールセンターにおけるAI活用では現在、チャットボットとの組み合わせによる取り組みが主流だ。実際にAIと組み合わせることでチャットボットの対話能力を飛躍的に向上させた例も少なくない。
しかし、チャットボットを通じたコミュニケーションについては、「味気ない」などネガティブな反応を示す生活者も存在する。将来は未知数だが、少なくとも現時点では、例えば、「行間に隠された意図を汲み取る」「文章の流れや使用されている単語などから喜怒哀楽を感じ取る」など、感情面の理解という部分では、訓練された人間の能力がAIを上回っていることがその大きな要因と言えるだろう。
このような状況の中で最善な対応を行うためには、AIチャットボットと有人対応をいかに組み合わせて運用するかが大きなテーマとなるが、どのような手法・バランスで組み合わせればセンター利用者を満足させ、CX(顧客体験価値)を向上できるかについて、絶対的な正解は見当たらないのが現状だ。そこで今回の特集では、既にAIチャットボットを活用し、センター運営の品質向上や効率化に取り組んでいるセンターの事例から、活用のあり方を探った。
今回取材にご協力いただいた住信SBIネット銀行(株)では、2022年6月にお客さま対応を行うカスタマーセンターにAIチャットボットを導入。適当な選択肢がなければ、有人チャットに移行・接続する運用体制を確立し、移行時にはチャットボット上でお客さまがたどってきたシナリオを担当オペレーターが確認できる体制を整えることなどで、お客さま対応の効率化と満足度向上を両立している。
また、ライフネット生命保険(株)では2021年4月、従来からのチャット対応を刷新し、AIチャットボットを導入。AIチャットボット、有人チャット、電話といったチャネルの特性を見極め、それぞれの優位性を生かした組み合わせの最適化を図ることで、お問い合わせをされるお客さまの体験価値向上につなげている。
両社の取り組みに共通しているのは、現在の運用体制を終着点と考えず、常にさらなる改善の道を探っていることだ。
例えば、住信SBIネット銀行(株)では、応対データの細かい検証から、シナリオ上の離脱ポイントなどを確認・改善するPDCAサイクルを確立し、運用体制のブラッシュアップを図っている。また、ライフネット生命保険(株)では、お客さまのニーズを充足できなかったケースの内容分析に基づいたチャットボットのシナリオ改善を継続的に実施することで、満足度のさらなる向上を目指している。

AIの“正確さ”と人間の“優しさ”や“寄り添う姿勢”を場面に応じて組み合わせる運用が求められる

囲碁や将棋でAIが人間の最高峰を上回ることが明らかになるなど、論理的な作業においてAIの能力が人間を凌駕することは否めない。コールセンター業務においても論理的整理が可能な部分については、その大部分をAIが担うことも可能であろう。
しかし、コールセンターを利用するのは人間であり、その行動原理は必ずしも論理的ではないので、コールセンターのコミュニケーションでCS・CX向上を果たすためには、時には論理を超えた“優しさ”や“寄り添う姿勢”に基づく対応が求められる。このような対応は、少なくとも現時点では人間の独壇場であり、AIの及ぶところではない。
コールセンターを利用されるお客さまのプロフィール、利用理由・場面などは千差万別であり、完全に類型化することは困難なので、全てのケースで、AIと人間のどちらかが対応することが最善かを判別することは不可能であろう。その中で最低限求められるのは、AIチャットボットでの対応が不完全なものであることを認識し、臨機応変に、かつお客さまにとって可能な限りストレスのないかたちで、有人対応に移行できる体制を整える姿勢にあると言えるだろう。

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