カスハラ対策で先行する企業事例 Vol.1
出典:CCAJ NEWS 2025年6月号(Vol.339)
会員企業の取り組みから学ぶ具体的なカスハラ対策
SOMPO コミュニケーションズ株式会社 様に、カスハラ対策に取り組むきっかけやその目的、具体的な施策などについてお話を伺いました。
2025 年6 月、労働施策総合推進法などの改正によって、カスハラ対策が企業に義務付けられることになりました。今回の改正におけるカスハラ関連の概要としては『カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化する』となっています。2026 年中の施行を目指して、厚生労働省が具体的な内容を指針として示す予定とのことで、今後、企業側は自社の方針を明確化するとともに周知・啓発を行うこと、従業員を守るための体制の整備などが求められることになります。
SOMPOコミュニケーションズ株式会社は、大手損害保険会社の一つである損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)の子会社であり、SOMPOグループ唯一のコンタクトセンター運営専門会社になります。1991年の創立で、現在は本社と全国6拠点にあるセンターを中心に、約1,300名規模の従業員が事故にあわれたお客さまからのご連絡受付とサポート、代理店を対象とした営業のサポートなどを中心に対応しています。同社総務部主任の熊倉真理さんは「損保ジャパンのお客さまに対して、事故の受付とその後の初期対応などが主な業務で、組織としても一番大きな規模です。その他に、損保ジャパンの代理店さんのシステムヘルプデスク、試算系のサポートといった業務も請け負っています」と説明します。
SOMPOコミュニケーションズの公式サイトには、『カスタマーハラスメントに対する方針』が掲載されています。そこには『従業員一人ひとりが安心・安全・健康に働ける環境を守るため、カスタマーハラスメントに対しては断固として「No!」と宣言します』(一部抜粋)と記されています。
これは、2024年12月に社内外に対して同社のカスハラに対する姿勢を明確にしたものですが、カスハラ対策への取り組みは2023年から進めていたといいます。総務部の筋浦辰裕さんは「当時、一定のクレームともいえるようなお客さまの声が多くて、離職が多かったり定着がなかなか進まなかったり、長年働いていた方でも苦にして辞められる方もいたりしました。また、東京都などでもカスハラ対策への取り組みが話題になっていたこともあって、まだグループ内でどこも取り組んでいないのであれば、私たちがいち早く着手して宣言を行おうということでカスハラ対策に取りかかりました」ときっかけを振り返ります。
この『カスタマーハラスメントに対する方針』は社外向けに公開したカスハラ対策宣言になりますが、それ以外に2つの関連資料を作成しています。『方針』以前に同社がどのようにカスハラ対策を行っていくのかを明確化した『カスタマーハラスメントへの対応指針』を2024年7月に社内公開。2024年12月の『方針』に続いて、2024年3月末に社内向けのマニュアルとして『カスタマーハラスメント対応マニュアル』があります。
同社のカスハラ対策の取り組みは現場の情報を収集することからスタートしました。2023年11月に“パブリックコメント”という社内制度を利用して、カスハラ指針の案についての意見を求めました。パブリックコメントは不定期に開催される従業員の皆さんの意見を求める社内のヒアリング制度で、自由に参加・発言ができるというもの。さまざまな議題について議論されるとのことですが、その一つにカスハラも挙げられました。それによって生の意見を収集するとともに、同社のカスハラ対策に関する周知にもなったといいます。
集められた意見を含めて最終的に出来上がったのが、①『カスタマーハラスメントへの対応指針』です。熊倉さんによると「現場としては、実際にどういう時に電話を切ったらいいのか、その際の話法をどうすればいいとかといった具体的な手法を求めているようでした。この段階ではそこまでは記載できませんでしたが、まずは全社的に方向性を明確化して共有できたと思います」とのことです。
さらに、『指針』のリリースと同時に、カスハラの実状に関する情報を収集するためのシステムも稼働し始めます。これは、苦情が発生したときの報告用データベースに、カスハラであるというチェックボックスを新たに設け、対応者がカスハラに該当した時に報告するものです。その情報をもとに、熊倉さん、筋浦さんを中心に総務部のメンバーによってカスハラかどうかの最終判断を行う仕組みになっています。まず『指針』を明確にした後に、報告のためのシステムを作成してデータ収集を続けるという取り組みになっています。
基本的な社内体制を整えた後に、②『カスタマーハラスメントに対する方針』によって、社内外に同社のカスハラ対策への立場を明確化します。
さらに、カスハラに対するより詳しい対応方法を明示する社内向けの③『カスタマーハラスメント対応マニュアル』を2025年3月に作成します。このマニュアルは、関連部とも協働で作成し、現場の意見を取り入れた切電基準を含む「現場対応ガイドライン」も盛り込まれているとのこと。「マニュアルによって基準ができたことで、一つの安心感にはつながっていると思います」と筋浦さんは話します。
今回、カスハラ対策を明確化する際のポイントとなったのが、カスタマーであるかどうかの判断でした。熊倉さんによると「損保ジャパンの代理店さん向けヘルプデスクも請け負っているのですが、当社にとってはお客さまでも、代理店は損保ジャパンにとってはパートナーであるという認識でした。その違いを埋めるために、丁寧にご説明して納得していただきました」と振り返ります。そういった認識の共有は現場への影響も大きかったようで、カスハラに限らず業務や情報共有がよりスムーズになったとのことです。
親会社でありクライアントである損保ジャパンとの連携は、それだけではありません。カスハラ対策へは、SOMPOコミュニケーションズの方が先に取り組みましたが、具体的な対応マニュアルは損保ジャパンが先行したとのこと。その情報も取り入れながら、コンタクトセンター向けの独自の『カスタマーハラスメント対応マニュアル』を作成しました。そのため、基本的な認識は一致しているとのことです。こういった丁寧な情報共有が、より的確なカスハラ対策につながるのではないでしょうか。
今後の取り組みについて伺うと、教育をより充実させていきたいとのこと。社内研修によってカスハラ対策に関する認識を高めると同時に、何がカスハラにあたるのか同社としての判断をより明確にしていきたいと話します。コンタクトセンターの役割や期待が多様化する中で、従業員一人ひとりの安心・安全・健康を守る取り組みの一つであるカスハラ対策。SOMPOコミュニケーションズの丁寧な取り組みは見習うことが多いように感じました。
出典:CCAJ NEWS 2025年6月号(Vol.339)

