カスハラ対策で先行する企業事例 Vol.2

テクノロジー

システムを有効活用したカスハラ対策

AAAコンサルティング株式会社 様に、カスハラ対策に取り組むきっかけやその目的、具体的な施策などについてお話を伺いました。

2025 年6 月、労働施策総合推進法などの改正によって、カスハラ対策が企業に義務付けられることになりました。今回の改正におけるカスハラ関連の概要としては『カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化する』となっています。2026 年中の施行を目指して、厚生労働省が具体的な内容を指針として示す予定とのことで、今後、企業側は自社の方針を明確化するとともに周知・啓発を行うこと、従業員を守るための体制の整備などが求められることになります。

賃貸管理のBPOソリューションを提供するAAAコンサルティング株式会社(トリプルエーコンサルティング)。
同社代表取締役社長の田所康二さんは「不動産管理会社が行うさまざまな業務を受託する不動産BPOの事業を展開しています。電話やチャット、メールなどのコンタクトセンターサービス、契約書類作成などの事務代行サービス、業務改善提案サービスなど、不動産全般に関するコンサルティングをベースに管理会社が必要とするサービスを提供しています。その中からそれぞれの管理会社が必要とする業務を細かく選べる点が当社の特徴で、セレクト型BPOと呼んでいます」と説明します。
これまで全国60社に対して約65万戸の管理支援実績があるとのことで、賃貸管理のコンタクトセンターとしては、リーシングセンター・カスタマーセンター・リペアセンターなど、それぞれの業務内容ごとに細分化して運営されています。「管理会社が人手不足や苦手と思う業務を受託しています。電話業務の場合は主に2つあって、空室の問い合わせなどの仲介会社とのやりとりと、入居者からの問い合わせやクレームなどの窓口になります」とのことです。
同社では、2024年9月1日に基本方針として『カスタマーハラスメントに対する方針』をホームページ上で公表します。同時に、社員向けのマニュアル作成、カスハラに関する情報収集のためのシステム作りを行うなど、カスハラを減らし、いずれなくしていくための取り組みを積極的に行っています。カスハラ対策へのいち早い取り組みの根底にあるのは、従業員を守り退職者を無くすことだと田所さんは話します。

具体的な対応マニュアルとカスハラSOS

入居者からのクレームで一番多い事例を伺うと、『隣人がうるさい』という騒音トラブルとのこと。クレームに対してはクライアントである管理会社と事前に取り決めた対応マニュアルに沿って対応し、案件の解決を目指します。「例えば、お隣にはこちらから連絡を差し上げますというお答えをするとほとんどの方がそれで大丈夫なのですが、それでも納得しない方がいて、受け答えが悪いとか、要領よく話せといった電話してきた目的とは違う苦情が延々と続きます。問題を解決できないのではなくて、対応に納得していただけないのです。そういうカスハラに対しては、声を上げてもいいのではないかと思ったことが出発点でした」と田所さん。実際に、『入居者から暴言を吐かれて対応がつらい』という理由で退職された方も多くあったことで、カスハラ対策に全社的に取り組むことになります。
『カスタマーハラスメントに対する方針』によって企業の基本姿勢を明確化するとともに、管理会社や現場の皆さんの意見を取り入れながら、具体的な対応方法を示した社員向けのマニュアルを作成しました。その中で、特に効果を上げている対応が、会話を終了して電話を切るタイミングを決めたことでした。「クライアントと協議してご了解いただいたのが、理不尽な質問とか要望に対して延々と相手をするのではなく、一定の時間が経過した場合には失礼のないように電話を置きにいくということでした。短い場合には、15分で対応を終えて良いと言っていただいたことで勇気をもらい、何とか時間内に会話を収めようと前向きな対応ができるようになりました。エスカレーションも早くなったし、何分という時間制限があることでうまくいくというのは、成功事例の一つだと思います」とのことで、カスハラへの対処法を定めたことによる安心感が各従業員のメンタルを支える一因になっていると田所さんは指摘します。
さらに、社内システム上に『カスハラSOS』というツールを構築。一人で抱え込まずに、カスハラ体験を情報として吐き出す場も用意します。その他にも、社員が会社に対して不平不満も含めて言える『AAA Geppo』というユニークなツールもあり、カスハラ関連の情報収集を積極化しています。「現場のナレッジを貯めていくことで、会社の方針もリバイスして新しくできます。そういう手順でPDCAサイクルを回しています」。その他、カスハラへの不安を払拭できるよう、入社研修の時にカスハラの問題を取り上げるなど、従業員を守る取り組みを積極的に続けています。

問い合わせには答えを用意してから返信

もう一つ、カスハラ対策にもつながる同社独自のユニークな取り組みに、入居者からの電話に対する音声認識を利用したテキスト化があります。一般的には、音声ログの延長として行うことが多いようですが、同社では問い合わせの内容を文字で確認してから返信を行うという手順を踏みます。例えば、騒音トラブルの電話が入った場合にその場で解決しようとするのではなく、テキスト情報を見ながら該当する管理会社のマニュアルを確認します。前後左右の部屋に電話するというマニュアルだとすれば、その手順を知ったうえでセンターから架電することになります。田所さんによると「検討した答えを用意してから話をするので応対品質も上がりましたし、“あなたのいっていることが分からない”“内容をきちんとまとめろ”といったカスハラにつながりやすい苦情が減りました。結果的にクレームの数も減ったのではないでしょうか」とのことです。
入電後の音声認識に限らず、いろいろなところでAI技術を活用していきたいと語る田所さん。「業務はクライアントと同じで、10時から18時までが営業時間となります。それ以外は、受付のみ行い翌日対応しているのですが、AIであれば24時間対応できるので、利便性も上がると思います。入居者からすると、夜中でも対応してもらえますし、AIでもいいのか時間がかかっても人からの折り返し電話が欲しいのかの選択ができるようになります。すでに録音して文字化するまでは成功しているので、そこから先は今までのナレッジを活用することで受け答えするというところまでいけると思っています」と目を輝かせます。クライアントからの賛同もあるとのことで、これからの取り組みに期待が集まります。
さらに「AIも重要ですが、一番大切なのはあくまで“人”です。いずれは、現在の従業員がすべてAIの上司になれるような人材に育ってほしいと思っています」と話します。そのために、さまざまな業務を経験できて、昇格や昇給も期待できる職場づくりを行っているとのこと。カスハラから守るだけでなく、より快適で働きやすい環境を目指して、さまざまな取り組みが進められています。

出典:CCAJ NEWS 2025年6月号(Vol.339)

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