特集:EX向上・人材最大活用につながる働き方改革
出典:CCAJガイドブック Annual Report Vol.33
ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて
そこで今回は、実際に働き方改革/ワーク・ライフ・バランスの実現への取り組みを行うセンターのご担当者にお集まりいただき、各センターのお取組みをご紹介いただくとともに意見交換をしていただくことで、働き方改革/ワーク・ライフ・バランス施策のあり方について探った。【参加者】
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 コンタクトセンター事業部 品質管理グループ グループ長 國﨑 美香 氏
株式会社TMJ 人材本部 人事戦略部 部長 山本 直樹 氏
Teleperformance Japan株式会社 コンタクトセンターマネージャー(CCM) 布施 卓朗 氏
株式会社ワイズ・ヒューマン 代表取締役社長 坂口 優子 氏
【司会進行】
楽天トータルソリューションズ株式会社/日本コールセンター協会 事業委員 小林 優子 氏
本日司会進行を務めさせていただくCCAJ事業委員会の委員の小林です。本日はよろしくお願いいたします。私は、現在は楽天トータルソリューションズにて、CS部門、インハウスのコールセンター、アウトソース先のコールセンターのマネジメントなどをしています。それではまず、皆様の自己紹介をお願いいたします。
あいおいニッセイ同和損保の國﨑です。弊社はご存じの通り損害保険会社で、コンタクトセンターは、ご契約者様、一般のお客様のお問い合わせ窓口として、契約内容変更手続きや契約の保全、フォローなどの業務を行っています。
私はまずコミュニケーターとして採用され、その後、SV(スーパーバイザー)を経て社員登用された後、部全体のシステムなどを担当。現職は品質管理グループのグループ長なので、現場では叩き上げと言われています。損保業界の中でコンタクトセンター領域は小さなものですが、今こそコンタクトセンターの力をどのように見せていくべきなのか、品質をどのように評価してもらうのかといったことを、“魂”を持って日々、取り組んでいます。
TMJの山本です。弊社はCX デザイン、BPOデザイン、コールセンター、事務代行を軸にBPOサービスを展開しています。私は契約社員SVで入社し、キャリアとしては現場が中心です。現在は人事部門を担当しています。直近では人事施策を中心に推進しておりますので、そちらをメインにご紹介、お話ができればと思っております。
Teleperformance Japanの布施卓朗です。Teleperformanceはフランスに本社があり、グローバルレベルでは非常に有名なコンタクトセンターBPOですが、日本での事業が始まってから丸4年ほどで、まだ日本国内では馴染みの少ないBPOなのかと思います。
今、コンタクトセンターBPOとして特に注力しているのが、クラウドキャンパスと呼ばれる、完全在宅のコンタクトセンター運営で、実際に私が担当しているオペレーションでも、私を含め全員が在宅勤務をしている中で、オフィスと同等、さらにはそれ以上のパフォーマンスを出そうということをキーワードに、日々奮闘しております。コンタクトセンター業界では私も叩き上げであり、オペレーター業務を経験した後、SVやトレーナー、QAなど、さまざまな役割を担当しました。弊社には管理職として2020年に入社し、現職はコンタクトセンターマネージャーというポジションで、オペレーション統括などを担当することが多いので、今回のテーマに関連しては、完全在宅の中で、どのようにリレーションやエンゲージメントを作っていくのかということを中心に、お話しさせていただければと考えております。
ワイズヒューマンの坂口優子です。弊社は健康食品会社のやずやから約20年前に分社し、コンタクトセンター事業を行っている会社です。私自身はやずやに新卒で入社し、この会社の立ち上げ時にはSVでした。その後、ゼロから学ばせていただき、現在は代表をしております。3年前からは新しく歌劇というエンタメ事業を立ち上げ、今はセンター事業をしながらエンタメの仕事をするという新たなチャレンジ中です。弊社はコロナ禍でもずっと全員出勤しておりましたので、完全在宅などについてなど、勉強したいと思っています。
皆さん、業種・業態、役割もさまざまな方で、いろいろな立場にあるということで、興味深いお話を伺えるのではないかと思っております。本題に入らせていただきます。コールセンターでは、お客様満足度向上のためには社員満足が重要という考え方があります。さらに人材確保が難しいという観点からも、さまざまな働き方で人材確保をしていく、今の言い方でいうとウェルビーイングやワーク・ライフ・バランス、働き方改革などの言葉で表現されるかと思いますが、まずは総論的に、それぞれの会社の働き方改革やワーク・ライフ・バランスの意義や必要性に対する考え方と、具体的に自社ではこんなことをしていますという事例を教えていただけますか。
ワーク・ライフ・バランスやウェルビーイング、働き方改革に取り組む目的ですが、一つ目は心身における健全性の担保、心と体がバランスよく健全に働ける状態をつくるということかと思います。 二つ目はこれらを高めていく活動を従業員のモチベーション向上、ひいては生産性やサービス品質の向上につなげることです。
三つ目はセンターの運営にも大きく影響しますが、離職を防ぎ、定着率を高めていくことになります。 さらに四つ目は、企業として、きちんと心身のバランスをとって働ける就業環境を整えるという社会的責任を果たすことです。これにより、企業イメージを高め、レピュテーションリスク※を低減することにもつながっていくのではないかと考えています。 また、実際に導入している人事制度についてもご紹介したいと思います。弊社ではSV以上について、従来はいわゆる契約社員でしたが、2016年度から職種・地域限定正社員に雇用区分を変更しています。正社員には総合職正社員と職種・地域限定正社員の2種類がありますが、SVの多くは職種・地域限定正社員です。賃金体系や雇用の安定化を実現するとともに、地域を限定することで、転勤ができない方にも働き方の選択肢を提示できるよう導入さていただきました。また、直近では今期リリースした、サステナビリティ宣言の活動テーマの一つとしてDEI(Diversity EquityInclusion)を推進しており、多様な働き方を応援する制度を導入しました。具体的には育児短時間勤務制度を小学校卒業までに延長。また、育児や介護など、ご家庭の事情等でやむを得ず退職される方について、ご本人が希望し、在籍中ならびに退職後に問題がなければ基本的に再雇用するという宣言を行いました。また、慶弔金・休暇制度の対象を事実婚、同性パートナーにも拡充する見直しも行っています。
日本では一般的に、コールセンター業界はストレスが溜まる仕事で離職率が高いというイメージがあると思います。また、地域によっては、多くのコールセンターが求人募集しており、ある意味、人の取り合いになっている現状があるかと思います。その中でTeleperformanceは、日本国内で知名度が低い状況下で人材を獲得しなければならないということで、ワーク・ライフ・バランスを非常に重視しています。特に在宅勤務という点をプッシュしており、必要なLANケーブルやパソコン、周辺機器も全部貸与するので、インターネット環境と自宅で就業するワークスペースだけ整えていただければ働けるということをアピールしています。
ワーク・ライフ・バランスについて具体的にはまず、残業時間の抑制や、決められた休憩時間の確保を行っています。また、実際に勤務してみると、業務上、クレームを絶対に避けては通れませんが、クレームを自分の家で、一人で受けるということは、オペレーターに精神的な負担がかかります。その負担をいかに取り除くかということで、現場レベルでは、SVがチャットベースでコミュニケーションを図りながら、常に目を光らせるということを行っています。
メンタル的な部分も含めてのワーク・ライフ・バランスをいかに実現していくか。それを会社として掲げるだけでなく、実際に従業員が実感するということを気にしていますが、現状は発展途上で、実感してくれる人と、まだサポートが足りていない方がいらっしゃいます。
そこで弊社では、センチメントサーベイという取り組みを行っています。これは、従業員が出勤している時間に「今日の気分どうですか」「元気ですか、へこんでいますか」といった簡単なサーベイに毎日回答してもらうというもので、その結果、低スコアが続いたり、精神的にトラブルを抱えていることがわかるようなコメントが出てきたりした時には、労務チームのスタッフがコミュニケーションを取り、それを取り除いていくといったアクションを行っています。
私どもはコロナ禍の中でも個人情報保護の観点で在宅勤務は実現できませんでしたので、スタッフ全員に理由と目的を説明して、「頑張って出てきてください」という話をしました。その中で、出勤してくれる人達が少しでも距離もとって、広い空間で仕事ができるようにという考えから、個人情報を扱わない管理部門と先述の別事業のメンバーに関しては今も在宅にしています。ここ数年で取り組んでいる内容としましては、ベースとしてやはり出勤していただかない中で、お客様満足も大事ですが従業員満足を優先するということで、既存のお客様の対応を行うセンターは、2年前に営業時間を短く、朝ゆっくり出勤していただけるコアタイムのワンシフトだけにしました。ワンシフトにすることで、スタッフ間の信頼関係、仲間意識を強くするという取り組みです。
社員の方を短いワンシフトにして、センターの運営時間のうち、それ以外の時間はアウトソーシングするということではなく、センターの営業時間自体を短くしたということですか。
はい。新規の受付センターはアウトソーシングしておりますので、そちらは今まで通りの受付時間ですが、、既存のお客様対応は、クライアントのご了解もいただき、営業時間自体を短くしました。スタッフを採用・定着させていく中で、朝ゆっくり出勤ということは有効に機能していると思います。
もう一つ、私どもでは女性が多い職場だからこそ、長い年月にわたって働いていただきたいと考えているのですが、その中で近年直面している課題が、会社設立から約20年を経て、60歳近い管理者層が増えてしまったことです。これに伴って、介護に対応しなければならないスタッフが増えてきましたので、まずはチームごとのシフトの融通で対応するようにしています。
また、60歳以上の管理者では、「60歳も過ぎたので、辞めようか」と発想することもあるのですが、逆に私どもでは、60歳から頑張ってもらえる、アクティブシニア事業部を作りました。この部署は60歳以上の人達が柔軟なシフトで、かつ今まで培ったノウハウを社内に還元していけるような、社内のお助け隊のようなもので、既に60歳を超えたメンバーで立ち上げし、これから60歳になっていく予備軍の皆さんが、自分達も行きたいと言っていただけるようなおもしろい、一番元気な部署となるように取り組んでいます。
お客様満足を上げるために従業員満足が必要という部分について、弊社では、仕組みはある程度できあがっていると考えています。その中で本当にそれが活用できているかが勝負と考えており、今はそのための環境整備に一生懸命取り組んでいます。単なるモチベーション向上や従業員満足ということではなく、本質的なエンゲージメントに取り組みたいと思っておりますが、それは特に働き手を数多く確保している企業にとってはやらなければいけないことだと思っています。
お客様満足にも当然取り組んでいかなければなりませんが、その中で焦点は、一言で言うと価値だと思っています。スキルや知識などに考えが行きがちですが、価値をベースにしていく。コロナ禍を経てコールセンターの運営が変わっていく中で、他社に倣ってDXに取り組まなければいけない、といったことではなく、コロナ禍のタイミングで価値の変化に気づかされたということですね。弊社のお客様が求める価値がどう変わっており、そのお客様に対してどう対応すればいいのか。そこには企業の価値とお客様の価値、コンタクトセンター領域の大きな企業価値という3つの価値があると思っております。
お客様のことだけ、会社のことだけを考えていくと、コンタクトセンター・スタッフがやらされている感じになってしまうこともあります。一方で、従業員満足だけを追求すれば、都合のいい会社になってしまうこともあるのではないでしょうか。そうではなく、継続的に安定したお客様サービスを提供し、かつ生産性を高めて利益を上げることで、いかに従業員の働き甲斐を充実化していくか、といったことを考え、エンゲージメントをキー ワードに環境整備を進めています。 また、弊社の場合は、25年以上の歴史がある中で、定着率は毎年90%を超えており、高齢化が進んでいます。その中で働く意欲はあるけれどもパフォーマンスは落ちていくという方もいるので、そこで平等性ではなく、公平性をどう実現するかといったところが、現在の弊社の課題です。
さらに弊社でも、今年10月に大きな人事制度改定を行います。残念ながら、コミュニケーターの全員正社員化はできなかったのですが、SVは契約社員を全員、コンタクトセンター専任社員という専門人材に育てていくという体制に変えていきます。コンタクトセンター領域に特化した社員という制度を作り、私のように中途採用、週3日勤務で入ってきた人が、20年後にはセンターグループの責任者であるライン長になれる、といったことを特別なことではなく、挑戦していけば可能となるキャリアアテンドとすることが、おそらくエンゲージメントになっていくのだろうと思います。
ありがとうございます。それぞれ他社のお取り組みを聞いて、この点をもう少し聞いてみたい、教えてほしいといったご質問などございますか。
Teleperformance Japanの布施さんにお伺いします。先ほど100%在宅で今以上のパフォーマンスをどう発揮するかに挑戦されているとのことでしたが、どのような意識で進めていくかについて、お聞かせいただきたいです。
私達の会社の価値について、コンタクトセンターBPOであるTeleperformanceでは、まずクライアント様がいてということなのですが、クライアント様から見た私達の価値と、従業員から見た価値は競合していて、矛盾しているように感じる部分もあると思います。その中で私達の場合、グローバルレベルでは長い歴史があって、そこでベストプラクティスが蓄積されています。それをオペレーションのスタンダードプロセスとして、グローバルレベルから、こうすれば成功するというプロセスをある意味教えてもらって動かしているので、スタートダッシュでサクセスできているところがあります。そのプロセスをいかに定着させていくかが、まず基本となるターゲットになっており、その先にいくことがある意味でゴールかと思っています。 マネージャーレベルではよく「今週のターゲットはこうしましょう」などとか言いますが、エージェントレベルでは、自分のシフト、給料、生活、つまりはワーク・ライフ・バランスがある程度保てれば、マネジメントレベルが目指すターゲットは達成しなくてもいいといった考えの人が一定数います。そういう方にいかに考えを変えていただくかという点では、小さいコミュニケーションの積み重ねがバリューを最大化させるアクションかと思っています。
正社員化については弊社でも取り組んでおり、私の部署では今、オペレーター100人のうち3割が正社員です。
正社員登用制度については入社した時点で「オペレーターも、このようなパフォーマンスをこの期間で達成したら正社員になれます」といったことを“見える化”しており、さらにその経過もポイント制で可視化し、誰でもアクセスできる掲示板で公開しています。悪い言い方で言えば、「エサをぶら下げる」といったものですが、そのエサも達成できるレベルのものを少しずつ提示し、最終的にみんなが望むキャリアや雇用の安定、収入を手にするといったことを目指しています。そのような方法で在宅環境でも、オフィスに負けないパフォーマンスや定着率、従業員のワーク・ライフ・バランスを実現していこうというアクションを取っています。

