コールセンターにおける従業員の福利と健康 Vol.1
コールセンターにおける従業員の福利と健康 Vol.1
ビジネスパフォーマンス向上を実現するウェルビーイングとは
そこで、従業員の“満足”だけでなく、より広い視野から従業員の健康的な社会生活を考える“ウェルビーイング”をご紹介します。ウェルビーイングをコールセンターに取り入れる意義について、株式会社プロシード 代表取締役社長の根本直樹さんと経営管理部 部長の長内範子さんにお話を伺いました。
ウェルビーイングは、WHO(世界保健機関:World Health Organization)が1946年に発表した「健康の定義」で使われた言葉です。「肉体的、精神的、社会的に、すべてが満たされた状態」を指しています(5ページ参照)。日本語では、幸福、福利、健康などと翻訳されます。
さらに、スマホなどのデジタル機器を健全に使う「デジタルウェルビーイング」や、2021年にWHOが憲章化した「ウェルビーイング社会」への道筋※など、さまざまな意味合いで使われる言葉でもあります。
※ウェルビーイング憲章:私たちが世界的に直面している複数の健康・生態系の危機を予防し、対応するために何をすべきかを示したもの
では、人が健康で幸福であることとコールセンターにはどのような関係があるのでしょうか。また、ウェルビーイングなコールセンターとはどのようなもので、何をもたらしてくれるのでしょうか。
2021年2月に開催したCCAJ コンタクトセンター・セミナー 2021で「目指すは ES/EX に満ちあふれた、ウェルビーイングなセンター構築 〜コロナをはじめとする環境変化にどう立ち向かうか?〜』と題したセッションに、モデレーターとして参加いただいた株式会社プロシードの根本直樹さんと、同社が主催するWell-being CUSTOMER CENTER AWARD担当の長内範子さんに、コールセンターが目指すウェルビーイングについてインタビューしました。
幅広い使われ方をするウェルビーイングですが、ビジネスパフォーマンスに特化したウェルビーイングを目指すと根本さんは話します。「ウェルビーイングは、良いコンディションで何かを実現しようという意味で使われる言葉です。社会や福祉、医療など、発信する分野によって意味が違いますが、ビジネスの世界でも注目されています。近年の研究によると、ウェルビーイングな職場環境では、“長く職場にいてくれる”“イキイキ職場で活躍してくれる” といった結果が出ています(5 ページ参照)。そこでプロシードとしては、ビジネスパフォーマンスを向上させるためには何が良いコンディションなのかを考え、その結果としてウェルビーイングを実現していくことを提唱しています。この場合、“働きがい” と表すこともできるでしょう」
働きがいとES との違いを伺うと、「従業員満足度は“働きやすさ” と表すことができます。働きがいは、肉体的、精神的、社会的に、すべてが満たされた状態で働き続けられる取り組みです。そこには働きやすさも含まれますので、ESとウェルビーイングとは同根異才の考え方と言えるでしょう」と根本さんは説明します。
同じ根幹ではあるものの、両者には大きな違いがあると根本さんは指摘します(5 ページ参照)。ES 向上には、働き方改革や健康経営、カスハラをはじめとするハラスメント対策など喫緊の課題が含まれます。これらは、主に企業側が用意、提供するケースになります。個々人では対応しきれない部分での課題を解決することで、働く環境をより良くしようとする取り組みです。従業員の意見を取り入れながらも、どちらかというと企業から与えるイメージがあります。一方のウェルビーイングは、一緒に築き上げる姿勢が重要となります。会社と従業員、さらに顧客まで巻き込むことで、すべてを健康で健全な状態にしようとする取り組みです。
「従業員の満足度を上げるには、まず困りごとや要望を改善する必要があります。これは、今まですべてのセンターで取り組んできたことであり、引き続き重要さは変わりません。さらに進んで、幸福度を上げるウェルビーイングでは、企業と従業員がしっかりと話し合いながら、独自の解決方法を見つける必要があります」
何が良いコンディションなのか、それぞれの立場で価値観は違います。個人の考え方だけでなく、年齢や役職、センターの役割、企業風土でも目指す方向は違ってくるでしょう。根本さんは「良いコンディションの実現について、究極の答えはありません。スタッフそれぞれの環境や目的を聞いて、ひとつずつ改善していくしかないのです。双方向で循環させながら継続して取り組んでいくことが最も重要です」と説明します。
プロシードでは、2021 年から「Well-being CUSTOMER CENTER AWARD」を開催。従業員アンケートをもとに最優秀センターを選出し、その結果を公表しています。
アンケートによる診断において、カスタマーセンタースタッフのウェルビーイングを実現するために重要な要素として、以下の7 項目を挙げています。
① 学びと成長:仕事を通じて成長/ それを実感しているか
② 認め合い:互いに認め合い、役立てていると感じているか
③ チーム力:心理的安全性を基にした協力的な関係があると感じているか
④ 能力の発揮:自身の役割を理解し、意思をもって行動できているか
⑤ 会社との信頼関係:会社と従業員、双方向の良好な関係があるか
⑥ 健全な職場:働きやすい環境か、従業員自身もさらに良くしようと感じているか
⑦ ワークライフサイクル:仕事と私生活はプラスの循環であるか
これが、ウェルビーイングなコールセンター構築に求められる具体的な取り組みです。これらの各項目の満足度を高めることで「会社から与えられた体験だけでなく、自分自身の行動についても肯定的に知覚することにより、仕事の時間をイキイキと過ごすことができるようになり、ワークとライフに正の循環が生まれ、幸福度が高まる」と指摘します。 2021 年度における「センター従事者の幸福度」については「センター従事者の幸福度は低くもなく、高くもない」「ポジションや雇用形態、業界といった属性による影響は出ていない」「センター単位で差異は大きく出た。マネジメントや業務タイプ、人間関係など内部環境が影響している可能性がある」との結果が出ています。
さらに、7 項目におけるポジティブ評価の割合を見ると、①学びと成長:39%、②認め合い:27%、③チーム力:39%、④能力の発揮:33%、⑤会社との信頼関係:33%、⑥健全な職場:51%、⑦ワークライフサイクル:29%となっています。
根本さんは「“⑥健全な職場” というのは快適なセンター環境であり、これまでのES の延長にあるもので、すでに多くのスタッフが満足していると考えられます。一方で、会社から必要とされている、同僚を大切に思えるといった“②認め合い” や、睡眠や運動といった“⑦ワークライフサイクル”の数値が低いことは、センター内でのコミュニケーションや私生活への配慮などにまだ不満が残っていることを示しています」と分析します。
長内さんによると「アンケート結果を見ると、ウェルビーイング意識の高いセンターでは、SV もコミュニケーターも“うれしい” “ありがとう” というコメントが多く、意識が低いセンターでは、“質問がしづらい” “設備も大切だがそれよりも人との関係をどうすれば良いのか悩んでいる” といった声が多くありました。
アンケート後も研究会を継続しているのですが、ウェルビーイングに積極的なセンターでは、コミュニケーションに時間をかけていて、ざっくばらんにヒアリングすることで困ったことを言いやすい環境を作っておられます」とのことです。

