独自のノイズキャンセリング技術を追求

テクノロジー

出典:CCAJ NEWS 2025年4月号(Vol.337)

ノイズキャンセリングアダプター「ノイズゲート」

株式会社 長塚電話工業所 長谷川 幸一 さん

6,400万パターンものノイズデータを記憶し、日常生活におけるノイズを徹底的に除去する「ノイズゲート」。同社製のヘッドセットのケーブルと差し替えることで使用できます。長塚電話工業所のサイトでは、製品紹介に加えて、激しい雑音が除去される様子を映した使用デモ動画がアップロードされています。
株式会社長塚電話工業所ソリューション営業部部長の長谷川幸一さん。CCAJの情報調査委員として協会活動にもご協力いただいています。今回は、ノイズキャンセリングを実現する製品開発を中心にお話を伺いました。
独自のロジックでノイズを除去

長塚電話工業所の長谷川幸一さんのコンタクトセンター業界におけるキャリアは2012年、ソフトフェア開発企業への就職でスタートします。当時の上司を筆頭に、多くの出会いの中でコンタクトセンターの魅力に目覚めたといいます。2019年4月には国産ヘッドセットメーカーの長塚電話工業所に転職。現在、録音機能を強化する独自ソリューションの開発・提供に携わっています。
長谷川さんを中心に普及に力を入れている製品の一つが、高機能ノイズキャンセルアダプターの「ノイズゲート」。最大の特徴は、他のノイズキャンセリング機能とは違う独自の技術が使われていることです。一般的なノイズキャンセリングには、イヤーパッドなどで物理的にノイズを防ぐPNC(パッシブ・ノイズ・キャンセリング)と、消したい音と逆位相の波形をぶつけて相殺するANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)があります。ノイズゲートは、ANC機能と本体に登録されたノイズデータを連係させることで、高度なノイズ除去を可能にするというもの。日常生活におけるいろいろなノイズを記憶していて、それをもとに不要な音を消します。長谷川さんによると「世の中にノイズと呼ばれるパターンが7000万種類くらいあるそうです。そのうち6400万パターンのノイズデータを本体側で記憶していて、それをもとに不要な音を一つひとつつぶしていくというロジックになります」と説明します。同社のヘッドセットには、ANCによるノイズキャンセリング機能があります。その組み合わせによって最大96%の日常生活のノイズを除去できるため、会話のみをクリアに聞くことができます。
開発開始は2020年。当初は数々の試行錯誤をしたと長谷川さんは振り返ります。「机上の計算ではできているはずなのに、実際に使ってみるとダメだということも数多くありました。逆に、うまくいっているのだけれどもそれがなぜなのかが分からないということもありました。そういったことをすべて解明するために結構なパワーをかけましたが、全部解決してリリースできてよかったと思いますね」と話します。

現場の皆さんの声に応えていきたい

もう一つの特徴が、ヘッドセット本体ではなくケーブル側にノイズキャンセリング機能を持たせたことです。ケーブルを差し替えるだけで最新機能を追加することができます。すでに同社のヘッドセットを利用しているユーザーにとっては手間やコスト負担が軽減されます。「一体型のノイズキャンセル機能を持つヘッドセットと同等以上の性能を、ずっとお使いのヘッドセットに追加できるので手軽ですし、コストパフォーマンスにもこだわることで、より多くの人に使っていただきたいと考えました」と長谷川さん。その根幹には、開発当初から本当に困っている人の手にきちんと届けたいという思いがあったと振り返ります。
ノイズゲート開発のきっかけは、新型コロナウイルス感染症でした。三密を避けるために、在宅やサテライトオフィスでの勤務やオペレーションが一気に普及しました。その影響で、パソコンに取り付けるUSB接続のヘッドセットのニーズが高まり、一般に使われるヘッドセットを量販店などで取り急ぎ入手するケースも増えました。緊急的な対応でしたが、業務用レベルのヘッドセットと比べると、品質や耐久性の面での問題がありました。その頃に、長谷川さんが最も相談を受けたのが周囲のノイズへの対応だったといいます。
さらに新型コロナは、センターのヘッドセットの使い方にも影響を及ぼします。感染防止の観点から、1ブースに1セットから1人1セットが求められるようになり、それだけ負担も増えました。そういった現場の声を聞き、状況を知るなかで、手軽で高品質でコストをできるだけ減らす製品を開発しなければという思いが募ったといいます。「コンタクトセンターに対する恩返しではないですが、お困りであれば全力で解決にご協力したい。当時は特に、そういう側面が強かったと思います」
アフターコロナの時代に入り、ノイズゲートの活躍の場はさらに広がっています。次第に出社に戻す企業が増えても、引き続き会議などはウェブで行われています。会議室が取れずに自席での対応が求められることも多く、周囲の音が気になるという相談が多く寄せられているとのこと。ノイズゲートを導入することで、ノイズだけでなく他の会話もカットできるため、導入する企業が増えています。
実は、協会事務局もユーザーで、オンライン研修やセミナーに欠かせないツールとして、活用しています。
入社以来、高齢者や難聴者が聞き取りやすくするために音声を明瞭化するソリューションの共同開発や、対面の話者の声だけを抽出する高指向性対面マイク「ピアボイス」などの開発に携わってきた長谷川さん。「当社は、ノイズを除去するための技術に関しては、プライドを持って開発しています。」と話します。
今後の取り組みについて伺うと、センターに蓄えられる通話録音などの録音データと、それを解析するための生成AIをつなぐハブ的な役割を提供していきたいとのこと。「通録データをAI側に送ろうとすると、いろいろと制約があってうまくいかないことが多くあります。そこで、CRMやCTIなどから送られてくる録音データや関連する情報をすべて引き受けて、それを処理してAI側のエンジンに送るといった役割を担うソリューションを開発して提供してきたいですね」と説明します。
最後に、仕事のやりがいについて伺うと「コンタクトセンターに対してソフトからもハードからもアクセスできる会社に入ったことで知見が広まりました。ヘッドセットはコンタクトセンターの必需品で、現場に近しい距離で仕事させていただけることはこの業界に魅了された人間からすると幸せな環境だと思っています」と話します。ノイズを除去してクリアな音にすることは、働く側にもユーザーにも優しく有用な性能です。その中でやりがいを持って取り組む姿勢に、コンタクトセンター業界のさらなる成長の可能性を感じました。

出典:CCAJ NEWS 2025年4月号(Vol.337)

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