コールセンターにおける従業員の福利と健康 Vol.1
プロシードでは、アワード後も参加企業との研究会を続けているとのことで、そこで話題に上ったのが、あるセンター長のポリシーでした。「20 以上のカスタマーセンターがある組織の中で、2 年連続してトップクラスの販売成果とES 診断結果を出したセンターがありました。そのセンター長が自ら、毎日、コミュニケーター全員と話をするというのです。会社からの要望はコミュニケーターにとって必ずしも喜ばしいものばかりではなく、負担や不満につながる場合もあります。そういうお願いをSV やリーダーに押しつけるのではなく、直接、会社の考えを伝えて、さらにコミュニケーターの意見を聞くようにしているとのことです。そのセンター長が他のセンターに異動になると、そこがまたトップクラスの成績を収めるとのことで、経営層も含めたマネジメントの意識と取り組みが、ウェルビーイング実現に不可欠であるとわかる事例だと思います」と根本さんは説明します。
SV やリーダーに押しつけてしまうと、そこにまた不満がたまります。センター長が責任を果たすことで、SV やリーダーも本来の業務にさらに専念することができます。コミュニケーターだけでなく、他のスタッフのウェルビーイングな環境に近づきます。センター長ご自身も、すべてのスタッフの意見を聞けること、その結果として大きな成果を上げていることに、満足を感じているのではないでしょうか。
アワード参加企業に限らず、ウェルビーイングを意識したコールセンターを目指す企業は増えていると根本さんは言います。「ウェルビーイングという言葉は、日本語でないこともあって、まだそれほど浸透していないと思っています。私たちが目指しているのは、カスタマーサービスを通じて社会を幸せにすることであり、そのために顧客や従業員を起点としたハッピーなエコシステムの構築を提案しています。その旗印として“ウェルビーイング”を掲げているのです。ワークエンゲージメントなど、他の表現もありますが、同じような考え方を持つ企業が増えていますし、最初からウェルビーイングなコールセンターを構築すべきだと考える経営層も増えていると思います。
最近、私自身が感じているのが、自社のコールセンター部門をインハウス的な存在にしていこうという流れです。FAQやチャットボットをはじめとするデジタル化が加速することで、リアルでやっていくコア人材の重要性はさらに高くなります。これからの顧客が求めるのはAIが解決できるといったものではなく、どんなに技術やサービスが進化しても、人でなくては解決できない問題が増えていくと考えられます。単純なところはデジタルで対応しますが、それぞれの企業に合わせた経験の育成が不可欠になります。そういう人材には、幸せな環境で働いていただくことが最も大切なのではないでしょうか」と話します。
ウェルビーイングとは従業員を大切にすることであり、さらにその先のお客さまも幸せになっていただこうという考え方だと根本さんは話します。「従業員の幸福度が高い状態のカスタマーサービスがより良い対応をすればするほど、お客さまは感謝と幸せを感じるでしょう。さらに、その反応を感じることによって、オペレーターが幸せな気持ちになります。その姿を見たSVやリーダーも幸せな気持ちになります。こういった好循環を生み出すことができれば、社会インフラであるカスタマーサービスは、幸せを産み出すエンジンになり、この仕事の社会的な価値が高まると信じています」
それを実現するためには、経営層やマネジメント層が意識を持ち、適切なメッセージを発信することが重要だと指摘します。従業員を大切にすると文字や言葉で表すことが、スタートラインに着くための宣言になるというのです。
「現在、イギリスのインターナショナル・カスタマー・エクスペリエンス協会(ICXI)と共同で、顧客体験の継続的な改善にも取り組んでいますが、お客さまも一緒にウェルビーイングになるには、販売者やコミュニケーターに敬意を払っていただくことが必要です。それにはまず、従業員を大切にしているのでお客さまも敬意を払ってくださいと、経営層が宣言することが大切です。難しい部分もありますが、決して不可能ではないと思います」と根本さん。長内さんも「まず健康であることが、精神にも良い影響を与えます。スタンディングデスクを用意したり、午後の仕事に影響しないように糖質を減らしたウェルビーイング・メニューを考えたり、センター内でもウオーキングできるようにすれば、帰る頃にはもっと健康になっているかもしれません。そんなちょっとしたことからでも、ウェルビーイングには取り組めると思います」と話します。
「お客さまもコミュニケーターも他のスタッフも、すべて同じ生活者です。考え方は違っても、すべてがウェルビーイングな環境にいられることは幸せなことです。コールセンターが、その起点の一つになることを願っています」
働きがいを持てる職場に幸せがあることは間違いありません。今後、その取り組みは、さらに重要度を増すでしょう。その一方で、根本さんも指摘するように、ストレス解消やハラスメント対策など、負の要素の改善も喫緊の課題です。次号では、ストレスマネジメントや厚労省のカスタマーハラスメントマニュアルなどについてリポートします。

出典:CCAJ NEWS 2022年10月号(Vol.307)

