特集:AI×チャットボットはコールセンター業務を革新するのか?

テクノロジー
ケーススタディ:住信SBIネット銀行株式会社
チャットボットの活用により、限られた人的リソースの中で満足度の高いお客さま対応を実現

国内インターネット専業銀行大手の住信SBIネット銀行(株)では、2022年6月にお客さま対応を行うカスタマーセンターにチャットボットを導入。有人チャットと組み合わせた運用体制を確立することで、お客さま対応の効率化とお客さま満足度の向上を実現している

● お客さまと直接・双方向型のやりとりを行う唯一の窓口としての機能を担うカスタマーセンター
2007年9月の開業以来、着実に業容を拡大し、2023年3月29日には国内インターネット専業銀行として初めて、東京証券取引所スタンダードへの上場も果たした住信SBIネット銀行(株)。同社では2022年6月、お客さま対応を行うカスタマーセンターにチャットボットを導入。有人チャットと組み合わせた運用体制を確立することで、お客さま対応の効率化とお客さま満足度の向上を実現している。
基本的に取引の大半がインターネット上で完結するインターネット専業銀行において、お客さまと直接・双方向型のやりとりを行う唯一の窓口としての機能を担う同社カスタマーセンターでは、問い合わせチャネルとして、テキストベースでコミュニケーションを行うチャット、メール(お問合せフォーム)と音声ベースでコミュニケーションを行う電話を用意している。
同社カスタマーセンターには、預金、振込などの同社が提供する各種サービスに対するご質問、カード紛失のお届けなど、さまざまな内容のお問い合わせが寄せられているが、その4割前後は「アプリやWebサイトにログインできない」というものである。
ログインできなくなる理由としてもっとも多いものは、「自身で設定したユーザネームやWEBログインパスワードを失念した」というものだが、他には「NEOBANK」関連のお問い合わせも増加傾向にある。「NEOBANK」とは、パートナー企業へ銀行機能を提供するBaaS(Banking as aService)事業のブランド名である。パートナー企業のアプリやサービスに、銀行機能を埋め込んで提供するもので、同分野で日本国内における先駆的存在となっている。この事業において提携企業で口座を開設したお客さまは個別にインストールする専用アプリを通じて利用することとなっており、住信SBIネット銀行本体のアプリやWebサイトからログインしてサービス利用することはできない。このような仕組みや使い方については、当然、口座開設時に告知しているが、中には十分に理解していなかったり、忘れてしまったりするお客さまもおり、「ログインできない」というお問い合わせが多くなる一因となっている。
なお、同社カスタマーセンターでは、基本的にチャットまたはメールで対応している。電話での対応を希望されるお客さまは、Webサイトからアウトバウンド予約が可能であり、希望曜日と時間帯の指定ができる。電話受信窓口は、緊急性が高く臨機応変な対応が求められる「ログイン・各種認証関連窓口」と「カード紛失・拾得、相続関連窓口」に特化して対応している。このような対応に加え、インターネット専業銀行である同社のお客さまでは、そもそもネットリテラシーが高く、電話対応を好まない方も多いという事情もあり、対応チャネルの7割前後がテキストベースのチャット、メールによるものとなっている。

● お客さまの利便性向上を目指し、チャットボット+有人チャットの体制を確立
チャットについては2021年春から有人チャットを導入していたが、その利用率は期待通りには高まらず、テキストベースのお問い合わせ対応の中ではお問合せフォームを起点とするメールでのやり取りが中心であった。そのやり取りでは、フォームを通じたお問い合わせにメールで回答していたが、続けて質問したい場合、お客さまはあらためてフォームからお問い合わせを行うこととなっており、不満につながる要素となっていた。このような状況から同社は、リアルタイムに近い双方向のやり取りができるチャットの利用率を高めれば、お客さまの利便性が向上でき、同時に“よくあるお問い合わせ”に対しては自動的に対応することで、お客さま満足度を低下させることなく、カスタマーセンターの限られた人的リソースを最大限活用できるという判断から、チャットボットの導入を検討。約10 ヶ月間の準備期間を経て、2022年6月に本格導入を実現した。
準備において特に注力したのは、チャットボットのシナリオの最適化である。同社カスタマーセンターのチャットボットでは、お客さまが問い合わせ内容に応じて、シナリオに沿って用意された選択肢を選んでいくと適切な回答に行き着くシナリオ分岐型が採用されているが、お客さまが自身にあてはまる選択肢を、必ずしも正しく選べるわけではないという問題があった。そこで、すべてのシナリオ分岐に、有人チャットに移行・接続する選択肢を設けることとした。お客さまの状況やお気持ちに合致する選択肢がなければ、オペレーターが対応することとしている。加えて、チャットボットによる回答に到達した場合でもアンケートを提示し、そこで「解決できなかった」と回答したお客さまにも、有人チャットに移行・接続する選択肢を設けることで、お客さまの疑問や困りごとをより多く解決できるようにしている。
なお、有人チャットの運用は平日9 ~ 18時となっているが、営業時間外に有人対応を希望されたお客さまについては、「お問合せフォーム」あるいは「アウトバウンド予約」に誘導するかたちとしている。

● 応対データ検証をベースにブラッシュアップを継続するPDCAサイクルの構築を図る
同社カスタマーセンターのチャットボット+有人チャット運用において注目すべきは、さまざまなKPIをリアルタイムで確認し、タイムリーな人員配置などに反映させる仕組みを確立していることだ。同社がチャットボット+有人チャットのシステムとして採用したモビルス(株)の「MOBIBOT」「MOBI AGENT」では、応答率やお客さまからメッセージを受け取ってからオペレーターが返答するまでの時間など、さまざまなKPIをリアルタイムで確認することができるため、その時点でセンター運営におけるボトルネックとなっている部分に機動的にオペレーターを配置することができるようになった。
また、チャットボットから有人チャットへ移行する際、担当オペレーターがチャットボット上でお客さまがどのようなシナリオをたどってきたかを確認できることも大きな特徴だ。このような機能を活用することにより、チャットボット+有人チャットの仕組み導入後はお問い合わせ1件あたりの対応時間が短縮。1時間あたりに対応するお客さまの数は有人チャットのみの運用時の5人前後から約2倍の10人前後に拡大している。
一般的にチャットボットの導入においては、お客さま満足度の低下が危惧されることもあるが、同社がチャット対応完了後に行っているNPS方式の満足度調査では、総合満足度、応対内容、応対時間のいずれにおいても満足度は以前より向上しており、現時点では大きな問題は見受けられない。しかし、同社ではさらなる満足度向上を目指しており、応対データの細かい検証から、シナリオ上の離脱ポイントなどを確認し、改善するPDCAサイクルを確立することで、運用体制のブラッシュアップを図っていく意向である。

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