特集:AI×チャットボットはコールセンター業務を革新するのか?

テクノロジー
ケーススタディ:ライフネット生命保険株式会社
AIチャットボットと有人対応それぞれの特性を組み合わせ、体験価値の最大化を図る

インターネットを主な販売チャネルとして各種生命保険商品の開発・提供を行うライフネット生命保険(株)では2021年4月、従来からのチャット対応を刷新し、AIチャットボットを導入。チャネルの組み合わせの最適化を図ることにより、お問い合わせをされるお客さまの体験価値を最大化することを目指している。
● お客さまからのお問い合わせ対応の体制拡充を目的にAIチャットボットを導入
2008年5月に「子育て世代の保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てることができる社会を作りたい」という思いから開業して以来、「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」をキーワードに、各種生命保険商品の開発と提供を行うライフネット生命保険(株)。同社コンタクトセンターでは2021年4月、従来から行っていたチャット対応を刷新し、AIチャットボットを導入。対応可能な業務の幅を広げ、顧客満足度の向上につなげている。
同社コンタクトセンターは、インターネット上で生命保険商品のご案内からお申込み手続きまで完結できることを特長とする同社にとって、お客さまと直接・双方向のコミュニケーションを行う社内最大の部署であり、お客さまとのやり取りの内容から推測される保険商品やウェブサイトに対する希望、改善点などを社内のさまざまな部署にフィードバックするという意味でも重要な役割を担っている。2008年5月の開業当初の対応チャネルは電話だけであったが、積極的な広告展開などにより同社の知名度が向上し、契約数が増加するとともに、契約を検討される層からの保険商品へのお問い合わせも増加したことに対応して2016年に当時普及が進みつつあったLINEチャット、2018年にはWebチャットによる対応も開始し、受付体制の拡充を図った。
さらに、お客さまが問い合わせをせずとも自己解決できるようになる顧客体験の向上と、営業時間外でも自己解決を図れるカバレッジの拡大を目指し、同社が2021年4月に導入したのが、AIチャットボットだ。

● きめ細かいシナリオ修正により高い自己解決率を実現
インターネットでお申込み手続きまで完結できることを特長とする生命保険会社である同社においては、普段からインターネットを頻繁に活用し、自己解決志向も強いお客さまが多い。AIチャットボット導入においては、問い合わせされるお客さまの自己解決率を向上するという目標が掲げられた。
この目標を達成するため、同社が力を入れているのが、実際のお客さまのお問い合わせ傾向に則したシナリオのチューニングだ。例えば、導入当初はフリーワードでの質問に対してチャットボットが回答できないことも少なくなかったが、類似した質問への回答例を参照できる幅を拡大し、より多くの質問に回答できるようにした。また、内容が複雑であるため、チャットボット上だけでは表現することが難しい保険金額や期間など補償内容の詳細については、Webサイト上の該当ページに容易に移行できる仕組みを導入し、お客さまがストレスなく、必要な情報を取得できる仕組みを整えた。
同社ではチャットボット対応の最終局面で提示する「お役に立ちましたか」という質問に対して「はい」と回答されたケースについて自己解決に至ったと判断しているが、チャットボットを含むテキストベースの対応では、情報セキュリティの観点から、お客さまの個人情報や具体的な傷病名を含む質問に回答できないといった制約もあり、2022年までは自己解決率が目標に達しないという月もあった。しかし、その後、長く複雑になりがちな保険商品の説明を、ポイントを絞って簡潔化するなどのきめ細かいチューニングを進めてきた結果、導入から2年以上を経過した最近では、月ベースでコンスタントに高い自己解決率を維持することができるようになっている。それでも同社は、この状況に満足することなく、さらなる向上を目指しており、先述の「お役に立ちましたか」という質問に「いいえ」と回答されたケースの内容を分析することなどにより、改善を図っていく方針である。

● チャットボットと有人対応の引継ぎ強化が今後の課題
チャットボット対応と有人チャット、電話といった有人対応との連携については現状、電話・有人チャットの営業時間において、チャットボット対応中のフリーワードで「担当者と話したい」など、移行を希望するキーワードが出現した場合に対応するかたちを採っており、有人チャット対応を希望されている場合は有人チャットに接続するバナーを提示、電話対応を希望される場合には電話番号を入力していただき、折り返し電話をするという対応を行っている。チャットボットでご相談されるお客さまでは、さほど回答を急いでいないケースも多く、改善希望の声も多く聞かれないことから、当面は現状の対応を継続していく方針だが、現時点においては、チャットボットから有人チャット、電話への引継ぎが行われた場合、担当オペレーターが引継ぎ前のやり取りに関する情報を自動的に閲覧できる仕組みとはなっていないため、この点については課題として、今後、改善を検討していく意向である。

● チャットボットと有人対応の組み合わせ最適化により、お客さまの体験価値最大化を目指す
先述の通り、チャットボットを含むテキストベースの対応では、情報セキュリティの観点から、お客さまの個人情報や具体的な傷病名を含む質問に回答できないが、電話対応であれば事前の意向確認と通話録音などにより、このような質問にも対応可能である。また、そもそもオペレーターと直接やり取りしながら細かい相談をしたいというお客さまのニーズも少なくない。
さらに、AIの活用によりチャットボットの回答精度は確実に向上しているものの、少なくとも現時点においては、会話のスピード・間や声の調子などからお客さまの感情の起伏を読み取り、寄り添った対応を行うという点については、生身の人間の対応の独壇場である。 このような認識から同社では、今後もチャットボットと電話や有人チャットの最適な組み合わせを模索していくことで、お問い合わせをされるお客さまの体験価値の最大化を図っていく方針である。

出典:CCAJガイドブック Annual Report Vol.33

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