特集:EX向上・人材最大活用につながる働き方改革
では、そろそろまとめのフェーズに入ります。まず、今お話しいただいたワーク・ライフ・バランスや働き方改革などのお取り組みの定量的、定性的な成果や取り組みを進める上でのご苦労、困っていることについてお話しいただけますか。
定量効果については、目標は達成していますが、それが本来の目的に対する成果になっているかどうかが課題かと思っています。定性に関しては、最大の目標は、先ほどお話しした価値の変化のような部分がスタッフ、メンバーに浸透するということですが、ある程度は実現できているように思います。
今日お話した内容は、今期から導入したものも多いので成果はこれからです。過去導入したSV層の限定正社員化では離職率が低下、成果につながっています。また、ワーク・ライフ・バランスの観点では、平均残業時間が30時間程度だったものが、直近では20時間を下回っています。
先ほどお話ししたセンチメントサーベイに従業員の4割程度が回答する中、5割程度で一番高い満足を示す笑顔のマークを付けていただいています。また、外部の客観的評価でGPTW(Great Place To Work)という認定制度があるのですが、今のところ連続で「働きがいがある会社」に認定されており、今年も無事認定されました。そもそもGPTW に認定されるためには従業員がサーベイに回答しなければなりませんが、それに在宅環境の中で協力していただけるというところで見ても、帰属意識が高い従業員が多いなと感じています。
定性的な部分では、在宅環境の中で「もっと人と関わりたいです」といった従業員の声が届くことがあります。これに対して私達は週に1回必ず、SVと何らかの1on1コミュニケーションをしましょうということを推奨しています。
さらにエンゲージメントを高める目的で、月に1回くらいのペースでオンラインイベントを実施していますが、シフトなどの関係で、実際に参加できる方が少ないといったことがあるので、その中でどうやって、従業員が求めるコミュニケーション、エンゲージメントを高めていくかを試行錯誤しつつ進めているところです。
ちなみにオンラインイベントは、具体的にはどのようなイベントですか。
さまざまなキャリアの方がいらっしゃるので、例えば、以前飲食店で働いていた方が料理教室を開催したり、元ヨガのインストラクターがヨガのイベントを行ったりというものです。その他、eスポーツなどのゲームのイベントや、単純に繁忙期が終わったタイミングでのお疲れ様会など、毎月1回くらいのペースでイベントを企画・開催しています。
坂口さんはいかがでしょうか。
今期はまだ半期が経過したところなので、具体的な数字がどのくらい上がったということは道半ばですが、半期ベースでいえば、従業員満足度やイベントの参加率、定着率は向上していると思います。その中で管理者側に少し負担をかけ過ぎたという懸念がありますので、今後、バランスを取って、管理者のストレスも軽減できるようにしたいと思います。
苦労したこと、障害はあまりなかったですか。
まさに今苦労しています。私達の取り組みについてはいろいろ発信しているのですが、それをキャッチしてくれる人は元々帰属意識高い人です。このような人は賛同して、「やります」と言ってくれますが、一方で、私はあまり興味ない」といった方の認知度、ひいては取り組みの母数をいかに上げていくかに苦戦していますし、課題になっています。
苦労が慢性化しているところもがありますが、全体的にはスタッフの責任や役割への意識の度合いに乖離があります。その温度差をどう埋めていくか、私達にとっての当たり前がメンバーの当たり前になっていない部分の溝をいかに埋めていくが課題です。布施さんが言われていたように帰属意識が高い人、マインドや貢献意欲がそもそも高い人、人間性に長けている方は、こちらから投げなくても、自分から情報を取りにいったりするのですが、電話を取っていればいい、といった意識のメンバーに対して、当たり前をどうやって当たり前にしていくか、という点については常に苦労しております。
例えば、育児や保育園のお迎えで、夜間帯は働けないという方々がいます。その方々に特別手当をお渡し、お子様を預けられるようにして、夜間も働けるようにという仕組みを会社として導入すると、おそらく育児をしている人だけに手当が払われるのは不公平という発想をされる方が出てくるかと思います。そういった価値観の転換が難しいと感じるところはあります。平等性と公平性の中で、平等性を求める考え方がまだまだ強く、問題解決を個人に求めるケースは多いですね。働き手にもっと柔軟に働いてもらうには、行政や企業が工夫して、個人の努力に委ねるのではなく、働く環境自体を整えるという社会モデルに変換していく必要があります。これは日本の文化や価値観に関係する話でもあるので、長い時間をかけて取り組む必要があると思います。
コンタクトセンターへの社会的評価や業界に携わる人のスキル、考え方のレベルは、日本よりグローバルの方が高いと感じます。グローバルでは日本以上にハラスメントに対して厳しい意見があり、また、人種、宗教といった部分で求められる公平性は、日本の男女の違いなどの比ではありません。いろいろな意味での多様性、公平性があり、それを多くの従業員が文化レベルでわかっていると感じます。
また、働く方のスキルレベルも、日本のセンターは基本的に日本語だけでサポートすることが多いですが、海外のセンターでは現地の言語プラス英語、さらにはプラス中国語などで対応しているので、バイリンガル、トリリンガルのスキルを持った方を採用しており、かなりの学歴やキャリアを持つ優秀な方が働く仕事というイメージがあります。そのため、スキルや自分のミッションなどに対して意識が高いという印象です。日本でもコンタクトセンターに対する考え方などがそういったものに近づいて、業界全体で、プロフェッショナルな仕事という意識に変えられたらと思います。
日本においては、まだまだコンタクトセンターで働く人の待遇が良いとは言えないですし、カスタマーハラスメント対策のような部分でも、まだまだ「お客様は神様です」のような考え方があります。先ほど坂口さんから営業時間短縮、山本さんからクライアント側への適正サービスの提案といったお話しがありましたが、その辺りを含めて環境整備を進め、大げさに言うと社会を変えて、コンタクトセンター業界の地位を上げていきたいと私も思っています。最後に、それぞれ今後のお取り組みの方針や意気込みなどをお話しいただければと思います。
弊社でも従業員のウェルビーイングやエンゲージメントの向上を方針として掲げています。そのためにあらゆる属性及び知と経験のダイバーシティを実現し、個々の強みや志向に応じたスキル育成を行うことにより、イノベーション創出文化の醸成と生産性の向上を実現したいと考えています。事業成長と従業員のエンゲージメント向上のバランスを取っていくために、個人に委ねるのではなく、会社として環境を整えていくことに取り組んでいければと思っています。
私達は日本ではまだまだ若い会社ですので、まずコンタクトセンターで働きたいと思っている方における認知度を高め、ブランド化していきたいと考えています。また、現在の従業員でも、ほとんどがTeleperformanceという会社名を知らずに入社している中で、そのままずっと働いてくださる方を育てなければならないので、会社のミッション、ビジョンやバリューを、従業員レベルで定着していくことが、今後の方針になっていくのかと考えています。 また、さまざまなクライアント様のプロジェクトがある中で、センターの目標には多様な設定があるのですが、目標達成をゴールにはしたくありません。「私達はプロフェッショナルですから、達成して当たり前ですよね」と考えた上で、クライアント様が求めるさらなる付加価値は何かまで追求できるようになればいいですね。クライアント様に目標達成を報告した上で、「こういった課題があります」といった提案ができるようになれば、仮に目標を達成できなかったとしても、その要因や背景をきちんと説明すれば納得していただけるようになると思います。
冒頭の國﨑さんの自己紹介の“魂”というワードに感銘したのですが、そういう方がこの業界にどんどん増えていってほしいと思います。会社は来年で20年ですが、、20年目に自分がこうありたいと考えた環境にはまだ辿りつけておりません。 今年の新卒社員が「何の仕事をしているの」と聞かれて説明した際に、「コールセンターなんだ、大変そうだね」と言われたというのを聞いて、愕然とした部分もあります。この業界でこの仕事をしている価値、私どもの企業理念も「価値あるものを創造し、社会に貢献・奉仕をする」というものですが、その実現はなかなか難しいということで、毎日、三歩進んで二歩下がるといったことを行っています。20年間思い続けていることで申し上げますと、私はこの会社を人が成長できる会社にしたいと思い、ワイズヒューマンという名前にしましたので、人が成長し続けられる会社にしたい、また、「その業界、大変だね」と言われるのではなく、「その業界で働いているんだね、すごいね」と言われるように、業界をもっと良くしていきたいと、日々切望しています。
センターのというよりは、私個人が思っていることかもしれませんが、まずはお客様接点の領域でいかに経営貢献できるか、センターの位置づけを損保会社の中でどれだけ高めていけるかを目指しています。そのためには先ほどから言っていますが価値ですよね。エンゲージメントに対してそれぞれの責任でどれだけの能力を発揮するかが重要だと思います。 私はそろそろ定年なのですが、やはり最終ミッションは継続的経営だと思いますので。最後にコンタクトセンター事業部の取り組みがお客様接点の中でいかに経営貢献できるかといったところを追求したいと思います。
皆さん、本日はご参加いただき、ありがとうございました。私自身も非常に勉強になりましたし、決意を新たにしました。やはりこの業界の日本における社会的地位をもっと上げていきたい。そのための一つの方法として、コンタクトセンターで働いている人達の人間力が向上し、外から見た時に「魅力的な人だね」と思ってもらえるように、会社という限られた中でも、そのような人材を育てていくということを進めていきたいと、改めて私自身も思いました。
出典:CCAJガイドブック Annual Report Vol.33

