コールセンターにおける従業員の福利と健康 Vol.2

マネジメント
ストレスマネジメントから見るストレスケア
アクティブワークケア開発センター代表 テレマーケティングコンサルタント 柴山 順子 様

CCAJスクールの専門コースには、コールセンターのストレスマネジメント基礎講座として「コールセンター特有のストレスを考える ~組織の健康測定とストレス低減策~」があります。その講師であるアクティブワークケア開発センター代表 テレマーケティングコンサルタントの柴山順子さんに、ストレスマネジメントによるストレスケアについて伺いました。

●ストレス原因とストレス反応
最初に、専門家の立場から見たストレスについて伺うと「ストレスに対して反応することが生き延びる力や進化する力につながっています。コールセンターでも、ストレスの原因をなくすことではなく、ストレスと上手につきあえる人間を増やすことが重要です」と説明します。
では、どうすればストレスと上手に付き合えるのでしょうか。「ストレスを原因と反応に分けて論理的に考えます。肩がこったりイライラしたり声が大きくなったりするのはストレス反応です。ストレス反応は長引くと健康にも影響を与えます」
まず、コールセンターにおける主なストレス原因として、①クレーム対応、②パソコンへの同時入力、③時間に追われる仕事であること、の3つを挙げていただきました。
ただし、クレームなどのストレス原因とストレス反応の間に心の働きがあるので、そのまま離職などにはつながらないと指摘します。「ストレスと上手に付き合う心の働き、ストレス対処方法をストレスマネジメントの基本用語ではコーピングといいます」

●コーピング(ストレス対処方法)
どういったものがコーピングにあたるのでしょうか。
「難しいことではありません。先輩や同僚のサポートを求めたり、休憩時間に暖かい飲み物を飲んだり、仕事が終わったら、仕事のことを忘れて自分の好きなことに没頭したりすることです。日頃のスポーツもおすすめです。体内のストレス物質のコントロールにも役立ちます」
コールセンターの中でもできる手軽なコーピングとして筋弛緩法を教えていただきました。こぶしをぐっと握ったり、両足を伸ばしたまま床から少し持ち上げるなどして筋肉を緊張させます。そのまま少しキープした後、だらーんと緩めるというものです。端末を見つめ続けて硬くなってしまった体を、あえて筋肉を緊張させて、その後緩めることで、心身ともにリラックスできるそうです。
「心と体はつながっているもので、体をリラックスさせれば精神もリラックスします。いつでもどこでも、すぐできるコーピングをたくさんもっていると新しいストレス原因にもさまざまな方法で対処できるかもしれません。チームで仕事をしているコールセンターですからお互いのコーピングを共有するのも良いですね」

●レジリエンス(ストレス耐性)
コーピングに加えて大切なのが、精神的体力であるストレス耐性を高める取り組みです。そのポイントを伺うと、「海外の研究で提唱されているキーワードがあります。参考にして、工夫してみてはいかがでしょうか」とのことで、「コバサの3C」(スザンネ・コバサ/心理学者)と「こころのABC活動」(オーストラリアカーティン大学研究者他)を紹介されました(図参照)。
アクトは活動すること、チャレンジは挑戦として有効性が理解できます。コミットメント(Commitment)とビロング(Belong)は帰属意識を持てる自分の居場所作りとして重要です。
さらに、コントロールについて伺うと、「自分がコントロールできている、主体として行動できていると感じることです。コールセンターのルールで許容できる範囲内で、自主的に行動できる裁量権を渡せると良いですね」とのこと。簡単な例として挙げていただいたのが、三交代で休憩を取る場合に、SVが決めるのではなく、3人のグループの中で自由に決められるというものです。「ルールの範囲内だけれど自由な雰囲気を作ることは、上司の腕の見せ所だと思います」と言います。
また、ストレス原因である悪質クレームへの対応に関しては、「本当に悪質な方は、この企業にはいらないというように、企業側がしっかりと判断してくださることが必要だと思います。一般のお客さまに対しては、しっかり丁寧に対応しますが、悪質クレームには断固とした態度を取るという枠を設けてきちんと示していただくと、従業者の帰属意識にも良い影響があると思います。そういった環境作りは従業者のメンタルヘルスのためにも経営層に期待される役割ではないでしょうか」とのことです。

●在宅勤務とストレス
新型コロナウイルスの影響もあって、在宅コールセンターの導入が進んでいます。在宅時のコミュニケーションやマネジメントに加えて、ストレスに関してもいろいろな苦労があると聞きます。専門的な立場から見る在宅勤務とストレスの関係はどうなのでしょうか。
「ストレスとのつきあい方から見ると、むしろ在宅勤務は適しています。2020年に行ったストレス調査では、在宅勤務の方がコーピングの種類が多いという興味深い結果が出ました。在宅だと社内ではできないストレス対処方法を選べますね。ペットと遊んだり、近くに子供がいた方がかえって気分転換になるとか。また、在宅から出社に戻った方も、コーピングの数が増えていました。在宅勤務という選択があることはコールセンターのストレスマネジメントに有効だと思います。新しいコーピングの発見ということで言うと、ワーケーションのように、いろいろな場所で仕事をすることも良いのではないでしょうか」

●できているところから
ストレスマネジメントと言っても何から始めたら良いのかわからないというケースもあると思われます。どのようなことから取り組めば良いのでしょうか。
「ストレスマネジメントは難しく考えずに、普段の研修の中で短時間、筋弛緩法を実践したり、導入研修のときにストレスはなくすものではなくて、上手につきあうものと伝えるところから始まります」
かつて話し方がしどろもどろになってしまうスタッフは、技術や知識面が問題と考えて追加で研修していたが、原因はストレスではないかと考えてコールセンターストレスマネジメントの研究を始めたという柴山さん。研修の中では、自分の良いところを考えたり、良い点を採点してみる、1日のおわりに今日良かったことを3つ書きだしてみる、などポジティブなワークも取り入れて、幸せに働くためのストレスマネジメントを心掛けているとのことです。
「心の中のことですからすぐ、画期的な数字に変わることはありませんが、継続することで必ず状況は良くなります。ストレスと上手につきあえることは、仕事に役立つだけではなく、自分自身の財産にもなります。コールセンターの人達は既にストレスとの上手な付き合い方ができているところも多いのです。まずはできている! という良い面からストレスマネジメントを始めて欲しいですね」とインタビューを明るく締めくくりました。

出典:CCAJ NEWS 2022年11月号(Vol.308)

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