座談会:AI活用・DX推進で実現する “新時代のコンタクトセンター”

テクノロジー
ヒューマンマネジメントの分野でも大きな成果をもたらすAI活用
内田

PoCを積極的に回されている中で、すでにAI活用にむけたPoCをいくつか進められていると思いますが、お差し支えない範囲でかまいませんので、現時点で実際に取り組まれているAI活用へのPoCについて少しお話いただけますでしょうか。

まず、AIの世界はとても広いです。ChatGPTのようなLLM(Large Language Models =大規模言語モデル)がベースにあり、大量のデータを吸収して学習し、そこから精度が高い推論が生成され、プログラミングになくても質問に対してきちんとした答えが返ってくるということをAIの定義とすると、まだ、「AIが人間の代わりになる」には相当手前の段階にあると思います。しかしながら、そのような完全形をイメージするのではなく、これまでできなかったコンタクトセンターの運営にうまくAIを活用する観点で行ったいくつかのPoCでは、とても高い利便性が検証できました。

内田

それは、とても興味深いですね。ぜひ具体的に聞かせてください。

たとえば、わたくしどもベルシステム24では従業員が3万人ほどおり、年間の採用は6,000 ~ 7,000人に及びます。ここにかかる運用工数はとても多く、面談を経て採用をするけれど、その検証はできていないという状態が課題でした。そこで過去10年分のデータを全部さらって、AIのアルゴリズムを組んで、応募時の表層的な情報をベースに、6パターンに分けたセンターの中で、「この人はこのセンターにはフィットするので長く続きます」といったことをスコアリングできる仕組みを2年くらい前に作りました。その仕組みを活用することによって、面談のみに重きを置くことがなくなったので、採用にかかるコストは同じ採用数で3分の2くらい減りました。なおかつ入社してからの継続率も人が面接して採用していた時よりも向上しています。

内田

たしかに、コンタクトセンターの運営上、採用した方の配属適正はとても重要ですし、AIを活かして大量のデータを上手くさばかれていますね。

ただ、興味深いこととしてはAI導入の結果としてキャリアを長く積んだ方の採用が増えたことです。比較的コンタクトセンターの運営現場は若い世代を中心に支えられていることも多いですが、データとして長期で勤めているかたには中堅世代の方も多く、それがAIの学習データとしてあるので、AIが判定するとその年代の方のスコアリングが高く出ることも多くあるわけです。
たしかに20代の人を追いかけると、1 ~ 2年間での離職や、早いケースでは数ヶ月で辞めています。すると、年間で4回くらい辞めては採用し、辞めては採用しというサイクルが回るので、トレーニング費用も相当な金額になります。そうすると初期研修に時間をかけても、年齢が比較的高い人に1年働いていただいた方が、センター全体のパフォーマンスは絶対に良くなります。このように、AIをヒューマンマネジメントの部分で活用し、一定の成果をあげることができました。

内田

かなり具体的に共有いただきありがとうございます。とても貴重なPoCですね。そのほかには、たとえば、オペレーションにAIを用いるトライアルなどは如何でしょうか。

コンタクトセンターのオペレーションに関しては、まだ納得できる成果は少ないですが、ただレベルは上がってきていています。会話の内容を分析して、次はこれを勧めたらどうですかとか、次はこういう回答した方がいいですよといったことがポップアップで出てくるような仕組みは実用性が高まってきました。このような仕組みが充実してくると、マニュアルなど、人が覚えなければいけないことが減ります。すると、さまざまな人が就業でき、業務についていけないという人も減って、長く続けていただけるので、センター全体の運営パフォーマンスも安定することにつながります。

内田

そのようなPoCの実例をお伺いすると、AI活用の未来が近づいている実感がわきますね。ありがとうございます。
さて、住川さんは、クライアント企業にAIの活用のロードマップを提言され、その実装までもサポートされる立場にありますが、コンサルティングを担われる観点から、AI活用をどのように見ておられますか。

住川

ある意味、少しずつ全方位への活用に進んできているのだろうと思っています。先ほど、呉さんが採用シーンでの活用事例をお話しされていましたが、聞いてなるほどと感じました。現場をオペレーションされている方の見立てからAI活用の幅が広がる好例だと思います。 そして、お話にあった応対ログの要約や応対支援ナレッジのポップアップといったように、応対を支援する部分での活用も有効だと思います。それから進化して、応対自体へのAI活用も進みAIボイスボットの精度も自然な会話の流れに進化していくでしょう。また、業界課題としてある、デジタルへのシフトに対しても、電話で会話をしながら画面を見ていただき、画面に提示したご提案をお客様にタッチで選んでいただくなど、だいぶ以前に業界テーマにあった言葉ですが、ユニファイドコミュニケーションがここ最近進んできたと感じています。

内田

そうですね。IPセントレックスの流れで実現されるユニファイドコミュニケーションのイメージが、いまのAIとクラウドの時代に、実装段階に来たという印象がありますね。

住川

AIの利活用が進むことで、一昔前はコンセプトで終わっていたあるべき姿が実現すると、一気にデジタル融合が進んでいくのではないかという期待も高まります。

そういえば、AIの最新モデルでは「質問を特定していく質問ができる」ようになっていますよね。コンタクトセンターにお問い合わせされる方のなかでも、具体的に何に困っているのかということを明確に伝えることが出来ない方もいらっしゃいます。そのような方に、気分を害することなく的確な質問で問題点を絞り込んで、的確な答えを返す人が優秀なコミュニケーターなのですが、将来的にはその困りごとを見極めるヒアリング部分をAIができるようになっていきます。そうするとAIが正しい答えを返すだけなので、人によって応対にばらつきがなくなります。また、AIが導いた答えを人が参考に応対することによってお客様へのサービス水準が大きく向上すると思います。

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