座談会:AI活用・DX推進で実現する “新時代のコンタクトセンター”

テクノロジー
経営とコンタクトセンター現場の距離の短縮化がDX推進の大きなポイントに
内田

さて、これまでお話しいただいた未来像は、やはりAIの進化が中心にありますが、視野を広げると、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)が創り上げる未来でもあると思います。
そこで、住川さんにお伺いします。DXについてはデロイトトーマツグループでも多くの提言がなされていますが、特に、カスタマーサービスやコンタクトセンターの領域では、どのようなことが示されていますでしょうか。

住川

DXにむけた話として、まずお伝えしたいことがあります。私どもでは、隔年でグローバルのコンタクトセンターサーベイを実施しています。コンタクトセンター長やセンターのマネジメント層に回答していただくサーベイなのですが、ここ最近、CX(顧客体験価値)の重要性があがっています。2021年のサーベイで「コンタクトセンターの最重要テーマはなんですか」という問いをしたところ、一番多かったのがCXでした。CXを高度化する、実現するということで、おおよそ50%の会社がそう回答されていました。その割合の数値は、日本の企業も海外の企業も変わりません。
しかし、それを実現するために「コンタクトセンターのKPIで何を最重要視しますか」といった問いに対しては、日本のコンタクトセンターでは「応答率」がトップで、海外の企業では「NPS」という回答がトップでした。その差を見ると、やはり日本のコンタクトセンターの位置づけや意識をトランスフォーメーションしていかなければいけないと感じました。

内田

それはコンタクトセンターのDXを推進するためには、まずCX経営への意識改革が不可欠であることを示唆する結果ですね。

住川

コンタクトセンターをDXに導くことを考えると、日本では、経営とコンタクトセンター現場との距離が遠く見えにくい環境にあることが課題です。極論すれば経営から見えているのは応答率とコストだけという状況です。それが、「なるべくコストかけずに応答率を上げなさない」という指示につながり、長年続いています。まずはその構造を変えなければいけません。これは、センターがインハウスで運営される場合でも、アウトソーシングでエージェンシーに運営委託する場合でも同じです。
私どもでは、その課題解決にむけてCoE(センターオブエクセレンス)の重要性を提言しています。経営やマネジメントの直下にCoEチームを置き、ダイレクトに経営の指示を受けながらCX視点でのオペレーションをリードする仕組みです。多面的なデータからオペレーションを徹底的に可視化し、良いやり方が見えれば広げていくといったことを通じて、経営と現場の距離を縮めていきます。それが、CXを支えるコンタクトセンターのDXのスピードアップと実効性を増すことにつながると考えています。

内田

クライアント企業がCoE機能を整えることが、インハウスでもアウトソーシングでも、コンタクトセンターのDX推進にむけた要だということですね。ありがとうございます。
さて、呉さんは、実際にクライアント企業からエージェンシーとして運営を任される立場にありますが、その観点から求められるDXについて、お話いただけますでしょうか。

DXにしてもCXにしてもそうですが、クライアント側には、それに言及しておかなくてはいけないといった空気があります。エージェンシーに示されるRFP(提案依頼書)でも、当然そのことに触れることが求められています。しかしながら、最も要求されるのは応答率という、住川さんがおっしゃる通りの現実もあります。
わたしたちベンダーもDX やCXに対する知見や経験、そして適応能力を高めています。当然、クライアント企業はそれに期待して発注していただくわけですが、実際に業務が始まると、ベンダーマネジメントの成果指標が、応答率中心になってしまっていると感じます。

内田

それは、わたしも経験があります。CXやDXの重要性は理解されながらも、限られたCS予算の範囲で、どうしても「まず応答率を確保しよう」になってしまう。ただそんな状況に、クライアント企業の担当者自身もジレンマを感じていますね。

そうです、確かにクライアント企業でもその点を変えていくべきだとの動きが増えてきています。特に、経営に近い場所にコンタクトセンターを位置づけている企業の担当者から、その変革への想いが強く感じられます。コンタクトセンターのDXを通じたCXの向上が重要だと捉え、積極的な投資の検討が進み、かなりスピードをもってDXプロジェクトが進められたこともあります。

内田

それはまさに未来への希望ですね。ちなみに、そのクライアント企業にはどのような特徴がありますか。

そのようなクライアント企業に共通するのは、若い世代の活躍があると感じます。熱意をもって何かを成し遂げたいという思いで話をしてくれます。コンタクトセンターが事業にもたらす価値を高めるために「ぜひ、それをやりましょう。さらに良いものもあれば、いつでも提案してください。」といった感じで、積極的に会話される方がいます。このように熱意をもってDXを実現しコンタクトセンターをプロフィット化させる思いが、今後さらに多くの企業に伝播していくことに期待しています。

内田

たしかに、若い世代がコンタクトセンターのDXを推進する起爆剤になっていることを感じます。「コンタクトセンターをプロフィットセンター化する」という、この業界の長年のテーマが実現される希望がみえますね。そして、事業への貢献価値が見える化されることにより、DX投資がより加速するのではないかと思います。
その点、住川さんは、クライアント企業にコンサルティングされる立場として、実際にプロフィット化に向けたロードマップを示されることもあると思いますが、これまで話をしてきた流れで、AIをうまく利用しながらDXを進めることについて、どのような助言をされているのでしょうか。

住川

まさにプロフィットセンター化というキーワードを深めて考えると、その中ではポイントが3つあると思っています。
1つ目はわかりやすい内容です。お客様サービスにはコストがかかるので、これをDXというか、デジタル化によってコストを圧縮できますということは、プロフィット化とは逆パターンになりますが、大きなポイントになります。最近ではそれがAI活用によってできるようなってきたので、ダイナミックに投資もできやすくなってきたということはあると思います。
2つ目としてはCXやエンゲージメントを高めて、そのお客様によりたくさん買っていただくといった、ライフタイムバリュー向上に貢献しますといった文脈があります。
3つ目は先ほどデータ整理のお話がありましたが、データの整理・活用といった要点があると思っています。

内田

そうですね。データ整理・活用については先ほど呉会長がおっしゃっていましたね。

住川

はい。今までは、それがあまり活用されないままにオペレーションが行われていたのですが、データ活用することで、コンタクトセンターのオペレーションが向上するだけではなく、経営やマーケティングに重要なデータで貢献できるということがあると思います。コンタクトセンターの運営価値だけではなく、データ価値などが組み合わさっていくと、費用対効果も出しやすくなるので、経営層に投資を促すこともできるのではないでしょうか。

投資を促す費用対効果の見極めでは、今はクイックなPoC(Proof Of Concept=概念実証)による効果検証がしやすくなっています。昔はやりたくても多くの費用が掛かりできなかった検証が、こうしてスピードをもって出来るようになったことは、とても大きいと思います。PoCを効果的に回せば、「駄目なものは捨てる、やれるものには投資をする」という判断にスピードと確実性を持たせることができます。また、PoCを通じた新しい取り組みへの挑戦は楽しいため、現場が活性化するという効果もあります。その動きがより活発になるように働きかけています。

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